スローバブックス(宮城県丸森町)インタビュー
Book! Book! Sendaiが行っているインタビューシリーズ、第5弾をお届けします。
今回は、宮城県丸森町の『スローバブックス』。
インタビュー中にもあるように、開店が昨年(2016年)の9月21日。
丁度、オープン1周年の日に、記事アップとなりました!
ではどうぞ
お話:スローバブックス/佐藤浩昭さん
聞き手:Book! Book! Sendai 武田こうじ、前野久美子
2017年6月27日インタビュー
とある夏になりかけの日の午後。ぼくたちは車で、丸森に向かっていたのでした。丸森は仙台から車で2時間くらい…前野さんご夫妻と2時間、車で一緒なんて(ミルクも)、それだけでも遠足気分で楽しいのですが、目的地が丸森の『スローバブックス』ということで、さらに気分は盛り上がっていました。
丸森は自然が豊かで…空気が違うというか…ほんと、心が洗われる感じです。と同時に「ほんとにここでやっているの?」という疑問も出てくるくらいの自然の中に入っていったのでした。
そして、辿り着いた『スローバブックス』は、静かに、優雅に、しっかりと、佇んでいました。
そこで一緒に暮らしているジャムさん(ロバ)のように。
佐藤さんの生家である築90年の木造民家を改装した、スローバブックス
武・前:よろしくお願いします。
佐:よろしくお願いします。
武:ブックブックでは宮城に新しく出来た本と出会える場を取り上げてきたのですが…。
前:ずっと前から「丸森に行きますね」って言っていたんですけどね。佐藤さんが「ロバさんが来てから」って言ってたから(笑)。
佐:はい。ロバさん、来てくれてよかったです。
武:オープンはいつだったのですか?
佐:オープンは去年(2016年)の9月21日です。
武:間もなく、1年ですね。
佐:はい。いつにしようって考えた時に、宮沢賢治の命日にオープンしようとなったんです。
前:そうだったんですね。
武:どれくらいの準備期間があったのですか?
佐:前の仕事…消防署を退職したのが、2015年の3月でした。そこから伊達ルネッサンス塾というのに通って…その時、前野さんにもインタビューしましたよね…そうですね、準備はだいたい1年くらいですね。
武:消防署…消防士ということですか?
佐:まぁ、救命士ですね、はい。
武:全然今と関係ないお仕事のように思えますが、お仕事している時から、こうしたお店を出したいみたいなことは考えていたのですか?
佐:うーん、震災のちょっと前から、仕事に対して息詰まるというか、悩んでしまって…2015年くらいまで…。
武:震災の前からだとけっこう長いですよね…。
佐:はい。それで、仕事というのは自分を表現するものだということを考えたり、そんなことを書いてある本を読んだりして…そんなことを考えているうちに、両親がなくなったり、結婚という驚きの出来事があったりして、これは転機だろうと思って、2015年の3月31日に思い切って退職しました。
武:奥さんとの出会いが後押しをしてくれた?
佐:はい。
前:消防署には何年働いていたのですか?
佐:27年、勤めました。
前:えー!すごい。
佐:長いですかね?
前:長いですよぉ。
武:それだけの時間働いていて、なにを悩んでしまったのでしょう?…話していただける範囲でいいのですが。
佐:うーん…。仕事に対しての向上心が薄れてきてしまったんですね。人を救うための訓練とかもあるのですが、そうしたことにも疑問が出てきてしまったり…年齢的にも役職について、現場などでも全体を見なきゃいけなくなったりして…。
武:なるほど…いろいろ考えて、このままでいいのか、と。
佐:そうですね。
武:そんな中、奥さんにも相談したら、賛成してくれて、って感じですか?
佐:具体的に、というより、妻はこの家に可能性を感じる、みたいなことを言っていて、ここでなにかできないか、と考えていたようですね。妻は芸術性がある人なので。
前:奥さんは絵を描くんですか?
佐:絵を描いたり、こういう看板をつくったり(看板を指す)。
前:そうなんですね。古本とカフェというのはどういうことから?
佐:そうですねぇ…私は本が好きなので…なんていうか、ロバのいる本屋というイメージはあったんですよね。
前・武:おぉー。
佐:なので辞める数年前から、本に関わる仕事をしたいとは思っていました。
前:ここでやるっていうのは、ハードルが高くはなかったですか?
佐:そうなんですけどね・・・他でやるというのもあまり考えられなくて…田舎で静かにやりたいと思っていて…。
前:他の場所も考えましたか?
佐:ちょっと考えましたけど、やっぱりここかなと思って・・・お客さんはあまり望めませんけど、ここでのんびりやりたいなと思いました。
前:実際にここに来れば、この本棚を見て、ゆったりして、気持ちよく過ごされるんじゃないかなと思います。
武:1年近くやってみて、お客さんはどうですか?
佐:そうですね…多くて10人くらいですかね。
武:一日に?
佐:はい。
前:えー、すごい!
佐:すごいですかね(笑)。ロバさんが来てから、新聞などでも取り上げてもらったので、来る人が増えましたね。
前:それは丸森の方が来るのですか?
佐:いや、他の地域の方たちですね。
前:地元の方は来ない?…ここをどう思っているんでしょうか?
佐:やっぱり、珍しいことしているって思っているんじゃないですかね…「よく、ここに出したね」と言われますし。
前:丸森は観光客は多いですか?
佐:そうですねぇ…齋理屋敷(江戸時代後期の豪商の屋敷。町が寄贈をうけた)には観光客は来ますね。
前:そこへ来た人たちがこっちに寄るというのは、ないのかな?
佐:そうですね・・・ちょっと離れていますからね。あと、カフェでもやればいいのでしょうけど・・・。
前:カフェはやる予定なんでしたっけ?
佐:いや、ここは水道水ではなく、湧き水なのでできないんです。
武:そうなんですね!
前:どこの湧き水?
佐:このちょっと上にあるんですけどね。湧き水なので震災の時なども止まることはないんですけどね。
武:それは・・・普段の生活ではOKで、お店ではダメなんですね。
佐:いろいろ設備をつかって、浄水すればいいんですけどね。
前:先ほど言っていたけれど、準備に1年…ここの本はほとんどご自分で持っていたものですか?
佐:はい、そうです。
前:で、少しずつ、増やしていった…買取で?
佐:意外と寄贈していただくことも多いんです。
前:そうですか。そんなに仕入れというのはないんですね。
佐:そうですね。もちろん、寄贈していただいた本、すべてを置くわけではないのですが。
前:そこが寄贈の難しいところですよね。
武:えっと、ここはたしか月に2回のオープンでしたよね?
佐:いえ、週に2回です。
武:うわぁ、失礼しました。来る途中の車の中で、前野さんが月2回って言うから(笑)。
前:あれ、ブログの見方、間違えたかな。
佐:だいたい、水曜日と土曜日に開けています。
前:あっ、ごめん(笑)。
武:もう(笑)・・・基本は水曜と土曜で・・・何時から何時までやっているのですか?
佐:10時から16時までですね。
前:冬は休んだんでしたっけ?
佐:はい。1月から2月は休みましたね。
前:そうなんですね。
佐:冬はやはり開けるのが大変な場所なので。
武:みなさん、やっているかどうかを確認してから来る感じですかね?
佐:ブログにやっている日が載っているので、それを見て来てくれる感じですね。
前:その空けている日以外はなにをやっているのですか?
佐:家の中や外の掃除…あとは耕野小学校という地元の小学校があるのですが、夕方、学童保育といって、見守りなどをしていますね。
前:そうなんですね。
武:この週2回というペースはご自分の中で、なにかあるんですね?
佐:もっと開けた方がいいのかなとも思いますが…あまり、お客さんを望めない部分もありますし、掃除などのメンテナンスもしっかりやりつつ、となると、今はこのペースがいいのかなと思っています。
武:そうなんですね。それと、先ほど、オープンするにあたって、宮沢賢治の命日に、というお話でしたが、宮沢賢治の存在は大きいですか?
佐:私というより、妻が好きなんですね。宮沢賢治の本はすべて読んでいて…。
前:そういう話を聞くと、お店はお二人で作っている、ということですか?
佐:二人で話し合って、いろいろ決めていますね。
前:奥さんがお店に立つこともありますか?
佐:はい。本の選定などは私がやることは多いのですが、他のことは妻が見てくれたりしますね。
前:本はかなりテーマを絞っているような気がします。
佐:はい。食の安全や自然に関するもの、料理の本や絵本、原発のことについて書かれたものなどが多いですね。あとは小説系というか文学のものもありますね。
武:前のお仕事を辞める時のお話で「仕事というのは自分を表現していくもの」という部分がありましたが、そうした意味では、今は自分を表現できているというのがありますか?
佐:掃除するのが好きで、本を磨いたりするのも好きなんですね。古本なので、汚れたものもあるのですが、それをきれいにしたりしながら、こんな作家もいるんだ、とか思いながら…そうやって勉強にもなるし、そういうのが合っていると思いますね。
武:そうなんですね。えっと、前野さんのブックカフェ講座に参加したということですが、その時はもう「やる」と決めていたのですか?
佐:そうですね、もう仕事もやめていましたし…本に関しての仕事…古本屋さんをやってみたいなぁと思っていましたね。
前:そうでしたか。あの時の講座に来てくれた人がもう4人も開業してくれたんですよ。
佐:えー、そうなんですか。
前:すごくない⁉
<ふぅーふぃー> ここでロバの鳴き声!
武:お腹、空いたのかな?
佐:ジャムさん、大丈夫ですよー。(窓から外に向かって)
前:敬語なんだ(笑)。
武:(笑)…丸森で暮らして、お店を出して、丸森には愛着がありますか?
佐:昔に比べると、最近の方がありますね。年齢を重ねるにつれて、田舎の良さがわかるというか。都会にはない静けさや自然の良さがいいんですよね。
前:自然に関しての興味などは昔からあったのですか?
佐:そうですね。アースデイのような環境に関するイベントに行って、いろいろ調べたりしていましたね。
武:奥さまについて訊いちゃうと…どうなんでしょう、奥さまの影響はありますか?
佐:どうなんでしょう…今も敬語で話していますが…。
武:そうなんですか!
前:なんか、似合う(笑)。さっきのロバさんに話したみたいに。
佐:妻はよもぎを取ってきて、ジュースにしたり…自然が好きで、そういう感じで合うんじゃないですかね。
武:いろんな意味でパートナーとして大切な存在なんですね。
佐:はい。
武:あっ、話が戻りますが…ブックカフェ講座に出た時の話だった(笑)…講座に出てみて、どうでした?
佐:その時はまだ家でやるとは思っていなかったですね。どこがいいか…丸森でやれるのか…カフェはできるのか…本の仕入れはどうしたらいいか…いろいろ悩んでいましたね。
前:そうかぁ。
武:そこから現実になっていくのはどんな過程があったのですか?
佐:そうですねぇ…ちょうど家の修繕があったり、うまく本を仕入れることができたり、妻のアドバイスで本の置き方…面出しして、ゆったり見せた方がいいとかを聞いたりしていくうちに、見えてきた感じですね。
前:そうなんですね。
武:では、これから、というか先を考えて、目標というか…やってみたいことなどはありますか?
佐:そうですね…やはり、小さいながらも続けていくこと。持続可能にしていくということがありますね。それと、如何にしてお客さんを呼べるかというもありますね。
前:あと、イベント出店していますよね?アースデイとか。
佐:はい。もっと、そうして出店とかできたら良いんですけどね。
前:それはお店と同じくらい大事な感じですか?
佐:そうですね。お客さんと知り合えますからね。
前:大変ではないですか?
佐:大変なこともありますが、いつもとちがうグッズを作ったり、いろんな方と知り合えたりと、楽しいことも多いですね。
前:なるほどー。開業してすぐ古書組合に加入して、毎回市場に参加されていますが、組合に入ろうと思ったのはどうしてですか?
佐:組合に入った理由は、本の仕入れを充実させたいと思ったからです。
自分の蔵書や古本屋さんからの購入だけでは、本の品数やジャンルも含め限界があると思いました。
それと古本屋さんの世界をのぞいて見たいとも感じていました。
絵本など中々欲しい本が手に入りませんが、本の知識や古本屋の経営なども含め、
地道にやっていきたいです。
前:インターネットでの販売はどうですか?
佐:ネット販売というのがよくわかっていなくて…でも、やった方がいいとは思っています。
前:では、いずれやる感じですか?
佐:やりたいですね、やっぱりネットでしか出ない本もあるでしょうし…前野さんはやっていますか?
前:たいした額ではないですが、やっていますよ。
佐:そうなんですね!どんなところがいいんですかね?
前:ネットでしか売れないような本がありますからね。より専門性が高い本とか…ネットで本を探している人がいるので、ニーズがありますね。
佐:そうなんですね。
前:がっちりやるには労力と場所が必要なのでむずかしいです。それも踏まえて…お店を週5日営業して、ネットとイベントもやって…いろいろ悩みながらやっていますね。
佐:そう考えるとすごいですよね。週5日開けて、本の仕入れもして、カフェの仕込みもして、イベントに出たり、こうしてここにきて話をしたり…。
前:まあ、あらためてそう言われると(笑)。
武:やり方をどう考えていくか…ということでもあると思いますけどね。
前:家賃がなかったら、いいなぁとかは思ったりするけど…ウチは自宅も賃貸なので家賃が二重あって。まぁ、街中でやるというのを選んだ…スタイルですよね…どういう風にやっていきたいか、ですよね。
佐:なるほど。
前:どういうスタイルでやっていきたいか、というのと、どれくらい売り上げを作っていきたいか、というのはタイヤの両輪みたいなものだと思うんですよね。私はお金の大きさって思想を生むと思っていて…お金って悪者ではないんですよね。その規模が生活スタイルに関係してくるから、そこをしっかり考えることは商売において大事なことだと思います。
佐:そうなんですね(考え込むように)…。
前:これは金額や規模が大きいからイイとか悪いではないんですけどね。
佐:目標の立て方なんですね。
武:先ほど、イベントに出て、お客さんを増やしていかなきゃって話していたんですけど…佐藤さんの生活と営業のペースでは少し難しいのかなとも思ってしまうのですが…これはいい意味でもあるんですが、どうでしょうか。
佐:そうなんですけどね…ここでやっていても、人がなかなか来ないですからね…地元も人も来ないし…なので、自分から出ていくっていうのもありますね。
前:逆にいえば、地域のコミュニティになっていきたいというのはありますか?
佐:うーん(考え込む感じ)…。
前:たとえば、地域の人が集まる場所に、っていうのであれば、丸森の歴史や地域の魅力がわかるもの…書籍だったり、資料だったり、映像だったりが置いてある、というのもいいかもしれませんね。
佐:あー、なるほど。
前:そういう資料館的な役割は、地元の人だけじゃなく、他所から来た人も、ここに来れば、丸森がわかるってなるからイイと思います。もちろん、丸森は行政も観光に力を入れていて、それはそれで魅力を伝えてはいますが、ここでは行政にはできないこと…古本屋ならではの視点でそれを考えていくのもアリかなと思います。
佐:はい(感心している感じ)。
前:ここは佐藤さんの城だから、思いっきりやってみてもいいと思います。良い羽目の外し方というか。
佐:羽目を外すのが苦手なんです。
前:(笑)そうかぁ!…私みたいには外さなくてもイイんだけどね。
武:佐藤さんはむずかしいと思います(笑)。なので、佐藤さんが羽目を外さなくても、たとえば、他の丸森の方で、ここでなにかやりたい方に場所を提供するとか…正直、丸森の日常の中で、人を取り込んでいくのは難しいと思うんですね。で、それでイイとも思うんです。ただ人が集まるようになっても煩わしくなってしまうかもしれないし…でも、なにか話さなきゃいけない時にここに集まるとか、たとえば、アート系のイベントなどを考えた時に奥さまとなにかやるとか、そういう会場のひとつになっていくといいのかもしれませんね。
佐:たしかに、イベントはなにかやりたいとは思っていますね。
武:必ずしも、やるのがイイとは思いませんが、地域の人や他所から来た人が交流する第一歩にはなるのかなぁ、と思って。
佐:コミュニティスペースとして利用してもらうのは、たしかにイイですよね。イベントもなにかやれればいいんでしょうけど…小さくても…。
武:最初に話したように、自分を表現できる仕事場で、のんびり、静かにやっていくというのは、ほんとうにイイと思います。と同時に、お客さんを呼ばなきゃいけない、というのも大事なことだし、その辺りのバランスがどうなっていくのか、面白いところでもありますよね。
佐:そうですね。
前:本屋ってどんどん少なくなってきていて、ネットで買う人がこれからも増えていくと思うんですよね。それは確実に。そうした中、本を買う目的のためだけに本屋に行くのではなく、本のある空間に行きたいってなっていくと、田舎も都会も関係なくなって、むしろ、こうした長閑な良い空間で本に接することも注目されてくると思います。
佐:なるほどー。
前:それは商売としては成り立ちづらいかもしれないけど、そうじゃない動機で始める人は増えていくかもしれません。どうしても、商売を優先に考えると、都会の方が人が多いので成り立ちやすいけれど、もうそうじゃない場所に本屋ができてきているので…
佐:たしかに仙台の書店も減ってきましたね。
前:佐藤さんはそうした状況…本屋が少なくなってきていることなどを考えたりすることはありますか?
佐:そうですねぇ…みなさん、やはり情報に縛られているような感じはしますね。どうしてもネットに関心がいくというか…ほんとうはそうした中、ゆっくり本を読む時間が持てればいいと思うのですが…。
武:ここが、ちょっと立ち止まれる場所になっていけるとイイですね。
佐:はい。ただ、さっきお話してもらったように、本だけではなく、資料館的な感じやカフェみたいな感じもアリかなと思います。
前:足を運ぶきっかけ、になりますからね。たとえば古本屋って言われた時に、みなさんが持つイメージはそれぞれだと思うんですよね。所謂昔からある街の古本屋さんのイメージを持つ人もいれば、リサイクルショップのような大型店を思い浮かべる人もいて…もしかしたら、古本屋にはあまり良いイメージを持ってない人もいるかもしれません。だからこそ、ここのお店として、なにかを伝えていった方がいいと思うんです。森の中の古本屋さんとして、みなさんが持つイメージと佐藤さんが伝えたいイメージが合えばいいのですが…やはり、そこはここにしかないなにかを伝えていくとイイと思います。
佐:なるほどー、そうかもしれませんね。
前:そういうイメージというか、伝えたいことの難しさ、大事さってあると思わない?(武田の方を向いて)
武:うーん、そうだなぁ…前野さんは火星の庭というハードな古本屋さんをずっとやってきて、ぼくも自分の活動をやってきて、その中でBook! Book Sendaiを二人で続けているわけですが…なんて言うだろう…ブックブックは舐められているようなところがあると思うんですよね。本好きな人たちからは…「本のイベントなんてやれるの?」みたいな感じで。でも、それは意図したところでもあって、ブックブックは良くも悪くも敷居を低くしていこうというのがあったんですね。本をディープに好きな人は「イベントはどうでもいいから、おもしろい本、ほしい本を手に入れられればいい」となるわけです。それももちろん、わかるのですが、それはまず置いておいて…。
前:そう、ふだん本に接していない人達にイベントなどで、交流したり、あまり知られていない街で起きていることなどを紹介したり、ということだったから。遠回りだけど、最終的に本を手にしてほしいという想いで。
武:そうなんですよね。一ヶ月に何冊も本を読む人からしたら、ブックブックは物足りない、だけど、一ヶ月に一冊くらいは本を読んでみたい、一年に一冊くらいって人に対しても入り口になる。もちろん、これはどっちが良くて、悪いってことでもないし、そのどっちもがほんとうの姿でもあって、一ヶ月に一冊の人が2、3冊になってくれればいいし、その時にたくさん読んでいる人の本の読み方とかに触れることになるかもしれない。そんなことを考えてはやってきたんですね。ブックカフェ講座も、かっちりとして敷居を高くしたら、もしかしたら参加者は減ってしまったかもしれない…だけど、開かれているとはどういうことかを考えていくというのはありますよね。
前:そうだよね。わたしも本業の火星の庭とはつながっているけれど、一致はしないで、どこか区別してやっています。お店は本があるところを目指して来てくださる方へ向けていて、Book! Book! Snedaiは本のないところに本を置いたり、本にあまり興味のない人も含めていろいろな人へ本を届けたいと思ってやっています。いつかは混ざり合ったらいいなと思いながら。
武:だけど、続けてきて、そこは思った以上に混ざっていかないというのがあって、ある程度はわかってやっていたつもりでも、やはりめげてしまう部分もあって…どっちも大事ですよね、って伝えるのが難しい…。スローバブックスも、来ればすごい良いところだってわかるし、今日も来て、すごいなぁと思いましたが、やはり、ここに来てもらうまでのこともすごい大事なんだと思います。
前:そうだよね。来れば、良いところってわかるよね。
武:なので、一年に一度でも二度でもいいから…今日はクッキーがありますとか、水がダメなら、誰かと一緒に企画して、今日はコーヒーが飲めます、みたいなここに来るまでの、なにかを作れるとイイのかなとは思いますね。
佐:あー!
前:そう、スローバブックス祭りとか、ね。なにか、きっかけ作りができるとイイですよね。
武:そうそう、夏休みはここで宿題してもイイですよ、とか…
前:そう、そして子供向けの本がその時は置いてあってね。
佐:なるほどー。
武:たまに背伸びしてもいいのかなぁ…みたいなね。
前:イベントっていうと、大きく感じてしまうと思うんですが、無理してやることではなくて、5~6人のお客様がいらして話すのもイベントなんですね。普段の形を大事にしながら、ときどき間口を広くしてみる…そうして、この空間がどんなことができるのか、求められているのか知っていくのは良いと思います。
佐:それは確かにそうですね。
武:佐藤さんらしく・・・スローバブックスらしく、なにかやっていけるとイイですね。ぼくは今日ここにきて・・・思ったのは、佐藤さんはプロだなぁ、と思ったんですね。別に審査しに来たわけじゃないですよ(笑)。空間の作り方や什器のこだわり、本の選書、配置など、いいなぁと思ったんです。で、もちろん、前野さんも・・・火星の庭もプロですよね。どっちがすごいじゃなくて、どっちも大事だと思うんです。街にはどっちもあってほしい。だけど、これが自分の家で趣味でやっているとなるとお客さんもそういう付き合い方しかしなくなると思うんですね。お客さんもお客のプロとして、ちゃんとお店に行ってお金を使わなくなっちゃう・・・それはなかなか言葉にできないことだから、難しいんですが。
佐:あー!そうですね。それはわかります。続けていけるように、無理せずにやっていきたいですね。
追記:
佐藤さんの佇まいがスローバブックスと同じく、控えめで、こちらの言葉を待っているという感じがあり、ついつい武田さんとわたしが熱く(笑)なってしまいましたが、佐藤さんの雰囲気が伝わるといいなと思います。このインタビューの後、スローバブックスでイベントがありましたと、佐藤さんから報告が届きました。阿武隈川ほとりの町、丸森。ぜひ皆さん、宮城県南部の丸森町へ、スローバブックスへ、遊びに行ってみてください。(前野)
佐藤さんから。
9日(土)の夜に店内にて「月と音楽とブータン」というイベントを実施しました。
秋の夜長、琴やギターそして三線の音色が静かに流れました。
場所の他に、玄米と雑穀のおにぎりを提供しました。
20人強(地元の人も含む)の方が来ていただき無事終了しました。
【スローバブックス フライヤー】クリックで拡大します
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「スローバブックスのスローな日々」
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