Monthly Archives: 1月 2013

【ちいさな出版がっこう】第3回講義

ちいさな出版がっこう 第3回
テーマ【読者にどのように手渡すか】
9月30日(日) 14:00〜17:30
せんだいメディアテーク7F スタジオb
台風が近づく気配を感じながら
第3回目が開講しました。

●中山亜弓さん(タコシェ)●
 東京都中野区、雑居ビルの一角にタコシェがあります。
10坪の店内にはところ狭しとミニコミやZINEが並べられています。タコシェという場所はそれらをつくる者が必ず行くミニコミの総本山として知られています。
 個人の出版物を一般の新刊書店に持ち込んでも、なかなか置いてくれません。取次ぎを通さない直取り引きは、買い切りというかたちが多いので書店では敬遠されます。そんな直取り引きをタコシェでは引き受けてくれます。内容がよっぽどのもの(著作権にひっかかる、個人への誹謗中傷)でなければ、お店に置いてもらえます。そんな間口の広いタコシェだからこそ、ミニコミや同人誌といった個人の出版物が集まり、総本山と呼ばれるようになったのです。お店で取り扱っている本の紹介をしていただきました。
以下要約。
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「こけしの旅の本」…プリンター出力。ぴらぴらの紙を挟んだり、途中でページの大きさが変わったり手製本だからできる遊びがつまっている。

「なにものからの手紙」…長形4号の封筒にわら半紙に出力した小説が入っている。手紙形式の小説。タイトルは全8種類ある。

「未知の駅」…ページをバラバラに印刷所に発注。自分や仲間の手で綴じる。本文はプロの印刷なのに、綴じは小口が揃っていないなどちぐはぐな印象を持つ。

「kalas」…三重県津市を中心とした地域誌。「どうしたら雑誌を続けられるのか」「お金の工面はどうしたらいいのか」といった作者の悩みをものづくりに携わっている知人たちにインタビューする。しかし、このような悩みは活動することやものづくりをする上での普遍的な問題であり多くの共感を得ている。

「ritokei」…離島経済新聞。島を専門に扱うタブロイド紙型の雑誌。新聞としても雑誌としても読める。島のポスターなど付録も充実。

 「ritokei」のように目的や読者層がはっきりしているものは、読者に届きやすい。しかし抽象的、個人的なものなど分かりにくいものほどちゃんとした説明がないと届かない。版形やページ数、作者は誰かといった情報や本の内容を客観的に説明する必要がある。マニアックなものをつくってもいい、ただ雑誌や本をつくる目的はそれらを知らない人に届けることである。かみくだいて、どう魅力的なのかを伝えることが大事である。
 読者の設定(身内だけなのか、世界中すべての人なのか)と読者に手渡す方法(販売か配布か)はつくる時にも気をつけることだが、売る時にはさらに気をつけないといけない。「つくる時と売る時は段階は違うが繋がっている」とナンダロウさんがまとめた。

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 私もこの間タコシェに行ってきました。
すれ違うのもやっと、という店内は紙質や厚さ、版形が異なる本であふれていました。読んでくれと言わんばかりの本、読みたいのならどうぞと隅にたたずむ本もあり、たくさんの本との出会いを楽しみました。講義の中で中山さんが、タコシェで買った本の感想を送り、それをきっかけにその後ご結婚された方がいらっしゃると話していました。「タコシェで出会った二人」と中山さんが嬉しそうに話していたのを思い出します。
 私は先ほどタコシェでのことを「本との出会い」と書きましたが、本の先には必ず人がいるんですね。つくった人がいて、読む人がいて、「人との出会い」の場でもあるのだなぁと思いました。

続いて

●木村敦子さん(てくり)●
 「てくり」は盛岡の生活・文化・伝統を特集に取り上げる地域誌です。発行元である、まちの編集室は「なんかやりたいね」と集まったフリーランスのライター、デザイナー、編集者で構成されています。普段の仕事のスタイルは依頼者から仕事を受けるかたちですが、自分たちが自由に好きなようにできることをしたいと始めたのが「てくり」だったそうです。そんな「てくり」の木村さんのパワフルな語りに力をもらいました。
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『出会い、タイミングは大事』
 「てくり」5号の特集は「盛岡ノートをポケットに」。この特集が組めたのは、出会いとタイミングによるものだったと語る。全国紙の取材を受けていた時、その記者の奥さんがエッセイストとして名高い、木村衣有子さんだった。是非にと紹介してもらった。その頃ちょうど盛岡ゆかりの詩人、立原道造が書いた「盛岡ノート」が復刻された。立原道造は東京から結核療養のため、盛岡に滞在していた。そして同じように東京から来る木村衣有子さんが「盛岡ノート」を手にまちを巡る、これを特集にしない手はない、と思い立ったそうだ。

『場を持つ、ということ』
 「ひめくり」という、まちの編集室がサポートしている店がある。東北に限らず書籍や食べ物、雑貨を取り扱っている。この店というかたちで、「てくり」に関する場ができたのには二つの背景があった。一つ目は、以前から特集に合わせたワークショップを場所を借りておこなっていた、ということ。二つ目は、まちの編集室が編集室と呼べる場を持っていなかったためだ。「編集室に遊びにいきたいのですが。」という問合せを受けるようになり、場を持つことの必要性を感じたそうだ。
 場を持つことで変わったことは、震災後にたくさん取材を受けるようになったこと。目に見える分、取材しやすいのだろうと推測していた。そして「私たちは本を出し、売ることが目的」と語り、イベントを「ひめくり」の店主に回してもらい編集に専念できるそうだ。また、「てくり」を読んで盛岡に来た人が立ち寄れる場となっている。

『モリブロ、というイベント』
 まちの編集室と知人で実行委員をつくり、盛岡のまちを舞台に本のイベントを立ち上げた。普段、面と向かって読者とやりとりをすることがないので、どんな人が読んでいるのか分からなかった。しかし、モリブロではそれをリアルに体験することができた。そして出店した店同士の繋がりが生まれ、開催して良かったと感じたそうだ。ゲストを呼んでの飲み会も楽しみの一つだと語る。
 モリブロは始まったばかりのイベントで何年か続けてみないとどうなるか分からないと語り、とりあえず3回はやることにしている。
 一箱古本市の会場となった桜山神社の参道(昭和レトロのいい通り)の再開発計画があった。まちの編集室は中庸の立場を取りつつも、桜山の特集を組んだり、一箱古本市の会場に選定した。地域誌を出す上で、このような行政に対する住民運動のからみは避けては通れない。いい面でもあり、悪い面でもある。しかし、そこは「てくりの人」として中庸な立場から、編集意図でもある「良さのアピール」をしていく姿勢は変えないと語る。

『熱意』
 読者に手渡す時に大事なことは「熱意だ」と語った。自分がつくったものを人に会うたびに、アピールしていくこと。東北人には苦手な人が多いが、とりあえず「こういうのやってます。」と前に出ることが大切だ。あとは名刺をつくること。きちんと住所を入れ、自分へ繋がりやすくする仕掛けを整えること。名刺、Web、ツイッター、フェイスブック等、個人発信のツールが昔と比べたくさんある。これを駆使すること。そしてできればレーベル名をつけるといい。個人名で活動するより世間からの信頼感が増す。

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以上が要約になります。
メディアをつくると二つのタイプに分かれるそうです。外に向かって発信しつづける人と内面を発表して満足する人。「ちいさな出版がっこう」は12月が最終講義となりますが、がっこうを卒業してもなにかつくり続けてほしいです。

ゲスト講師のお話が終わった後は受講生に出された宿題の発表をしてもらいました。
座学の講義は今回で最後、次回からは実践編になります。
次回までの宿題は「1,2ページでもいいので本番に近いかたちでつくってくる」です。

 

(テキスト:村上美緒)


【ちいさな出版がっこう】第2回講義

ちいさな出版がっこう 第2回
テーマ【どうやって本をつくりつづけるか】
8月19日(日) 14:00〜17:30
せんだいメディアテーク7F スタジオb
真夏の昼下がり
第2回となります、ちいさな出版がっこうが開講しました。
夏休みに授業があるなんて、特別授業みたいでわくわくします。

●立花文穂さん●
 アーティスト、デザイナーでもある立花文穂さん。
「美術・写真・ことば…さまざまな表現をぐちゃっとまるめた紙塊」というキャッチフレーズの、こだわりの雑誌『球体』の編集をしていらっしゃいます。どんなこだわりなのか、といいますと…
以下要約。
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こだわり1 「糸かがりという製本」
 糸かがりという製本方法は、糸が切れなければ何年ももち、ページをしっかり開けるという利点を持っている。しかし消耗品でもある雑誌に、コストがかかる糸かがりを使うことは非常識なこととされている。
こだわり2 「不親切!?」
 「球体」の特徴は一枚の写真やイラストを大きくどーんと配置するレイアウトにある。見出しは最低限しかなく、一般的に必要とされるリードやタタキが無い。
 書店で初めて手に取った人は不親切な印象を受けるかもしれない。しかしそう感じるのは、なんでもかんでも説明的な現代だからではないのか。本屋の棚に並んだ時、いかに目立つかという広告的なデザインに抵抗がある。それでは50年後100年後に、この時代にどんな出版物、雑誌があったのか振り返れない時代になるのではないか。物理的な残し方(月日が経つと、のりが割れて本がバラバラになってしまう)や内容(どれをみても代り映えのない)を含めて。
 未来の人が「この時代の人は何を思って本をつくっていたのかな」と言った時に「こんな本が出てきたよ」と『球体』が出てきたらいいなと思う。

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 コストがかかる「糸かがり製本」、説明が少ない「不親切さ」という『球体』のつくりは今の時代に即していないかもしれないと語った立花さん。「100年後には理解してくれる人がいるんじゃないかな。」と100年経っても残る本づくりをしていらっしゃいます。まるでタイムカプセルのようですね。
本とはなにか。その根本を考えさせられるお話でした。

続いて

●三島邦弘さん(ミシマ社)●
 自らを「小さな総合出版社」と語る、ミシマ社の三島邦弘さん。
書籍から絵本まで出版されています。そしてトーク開始早々、名言が飛び出しました。「本はジャンルで面白いんじゃない。どんなジャンルでも面白いものは面白い。」さすがは総合出版社さん!その自信が見えました。
 また「出版は東京じゃなくてもできる」と京都府城陽市に築50年の一軒家をオフィスかまえ、東京のオフィスと行き来しているそうです。体現していますね。「出版は東京じゃなくてもできる」という言葉は地方にいる私たちにとって力強い言葉です。
熱量のお話が面白かったのでご紹介します。
以下要約。
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 何かを始めようとすると、ぶあっと熱量(テンション)が上がる。でも次に売れるか売れないかの話になると、熱量が下がり企画がこじんまり、まとまってしまう。始めよう!と思い立った時のわくわく感が消えてしまう。熱量が下がることは、つくり手を疲弊させる。結果はどうであれ、予定調和で終わらせるのはだめだ。本来、人が集まれば熱量は上げていかなければならない。そして一度消えた熱量は取り戻せない。

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 「これ面白いんじゃない!?」
という思いつきは誰にでも経験あることではないでしょうか。「これ絶対面白い!面白いに違いない!」あの状態が熱量の高い状態で、三島さんいわく「無根拠の自信」に溢れている状態。
 結果をかえりみず無根拠に自分を信じて突き進む、というのは
言葉で言うほど簡単ではありません。でも実際に、そう突き進んでいる方に会ってお話を聞いているとなんだかできそうな気がするー!!と思ってしまいました。きっと三島さんの熱量が伝わってきたせいかもしれません。

ゲスト講師のお話が終わった後は受講生に出された宿題の発表をしてもらいました。主任講師のナンダロウさんが丁寧に的確にアドバイスしてくださいました。
次回までの宿題は「本の見本をつくる」です。
どんな本ができるのかお楽しみに!!
(テキスト:村上美緒)

【ちいさな出版がっこう】第1回講義

 ちいさな出版がっこう 第1回 
 テーマ【どんな本をつくりたいか】 
 7月29日(日) 14:00〜17:30 
 せんだいメディアテーク7F スタジオb 
  
 いよいよ 
 ちいさな出版がっこうが開講しました。 
 受講生、ゲスト講師、スタッフの初顔合わせとなりました。 
 これから半年間、すてきな本づくりを一緒にしていきましょう! 

 ●島田潤一郎さん(夏葉社)● 
  
 小説家を目指していた島田さん。 
 出版社を立ち上げ初めて出した本のエピソードが心に残りました。 
 以下要約。 
 
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 「人生は自分が思っているより短い」と思うような出来事がおこった。 
 従兄弟が突然、事故で亡くなった。おじは悲しみに暮れ、体がひとまわり小さくなったように感じた。そんなおじ、おばのために自分の出版社から本を出して贈りたいと思った。 
 その本は一冊まるごと一編の詩でつくる、という構想があった。 
 頭にぼんやりイメージできるが、かたちにする術を知らなかった。どうしたらいいのか分からなかった。 
 それでも「この人に挿絵を描いてほしい」と思うイラストレーターにお願いした。 
 自分のイメージしたものに近づくため、試行錯誤をくり返した。 
 こうして2年かかって出版した「さよならのあとで」をおじおばはとても喜んでくれた。 
 その時、編集者とはイメージした本をつくるため、いいイラストレーターいいデザイナーをコーディネートすることかなと思った。 
 
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 「こんな本を出したいんだ!」という強い思い、そして妥協を許さない強い意志を感じました。島田さんご本人、夏葉社の本に対して無垢で純粋な印象を受けました。また、ものをつくる上で大切なことは「光が当たっていないこと、誰もやらないことをすることだ」と話してくれました。現在は新しい企画を進めつつ、顔の見える出版社としてブログやツイッターで近況を知らせている、とのこと。 
 ぜひチェックしてみてください。 
  
 
 続いて 
 
 ●羽鳥和芳さん(羽鳥書房)● 
  
 東大出版会(研究の成果や教科書を出版している)では法律専門の編集をされていた羽鳥さん。定年を機に出版社「羽鳥書房」を設立しました。編集の仕事がおもしろくてやめられない気持ちと編集以外の営業や運営といった本を読者に届ける仕事もやってみたいという気持ちがあったそうです。 
 
 羽鳥書房の社員はなんと5人。 
 今のご時世、出版社を立ち上げるだけでも大変なのに正社員が5人もいて大丈夫か、と周りから心配されたそうです。しかし、仕事は外注せず社内で完結させるのが羽鳥書房流。本の装丁はデザイナーに頼むが、校正などそれ以外の出版に関わる仕事はみんなでこなしているそうです。 
 
 なぜ、このようなスタイルをとっているのか。 
 実はそこに、大手出版社がフリーやアルバイトのデザイナーを安く使っている現状があるとのこと。それを見てきた羽鳥さんは「これはおかしい、うちでは絶対にしないぞ」と思ったそうです。この他にも「出版業界のおごり」として、出版社から取次ぎを通して書店に卸すシステムは新規参入を阻止していると語りました。これらを踏まえ「出版業界に未来はない。だけど出版には未来がある」とまとめました。 
 
 羽鳥書房には「法律・美術・人文」というジャンルがあります。 
 でもいろんな人が企画に関わり、ジャンルの幅が広がったそうです。(絵本も出されています!)柱となるジャンルはあるが、一番大事なことは「出したいものを出す」こと。「売れる本」ではなく「私が出したい本」であること。そしてこの人の本を出したい、この人にデザインを頼みたいという、自分がつくりたい本に妥協しないこと、だと語りました。出版不況だと言われているが、手がけた本は重版になっているとのことです。ちゃんとやれば売れるのだと熱心に語っていました。「ちゃんとやる」とは「私が出したい本」にどれだけ忠実であるか、ではないでしょうか。想いを込めた本を読者に丁寧に届ける。出版社の想いがつまった本は読者にも伝わるとおもいます。 
  
 第1回目の授業が終り 
 主任講師のナンダロウさんから宿題が出されました!! 
 え・もうさっそく!?となったのは私だけでしょうか。 
 次回までの宿題は「つくりたい本の設計図をつくってくる」です。 
 まだ妄想のかたちでいい、とのことだったのでどんな妄想が飛び出すか楽しみです。 
 (テキスト:村上美緒)