スローバブックス(宮城県丸森町)インタビュー

Book! Book! Sendaiが行っているインタビューシリーズ、第5弾をお届けします。
今回は、宮城県丸森町の『スローバブックス』。
インタビュー中にもあるように、開店が昨年(2016年)の9月21日。
丁度、オープン1周年の日に、記事アップとなりました!
ではどうぞ

お話:スローバブックス/佐藤浩昭さん
聞き手:Book! Book! Sendai 武田こうじ、前野久美子
2017年6月27日インタビュー


とある夏になりかけの日の午後。ぼくたちは車で、丸森に向かっていたのでした。丸森は仙台から車で2時間くらい…前野さんご夫妻と2時間、車で一緒なんて(ミルクも)、それだけでも遠足気分で楽しいのですが、目的地が丸森の『スローバブックス』ということで、さらに気分は盛り上がっていました。

丸森は自然が豊かで…空気が違うというか…ほんと、心が洗われる感じです。と同時に「ほんとにここでやっているの?」という疑問も出てくるくらいの自然の中に入っていったのでした。

そして、辿り着いた『スローバブックス』は、静かに、優雅に、しっかりと、佇んでいました。
そこで一緒に暮らしているジャムさん(ロバ)のように。


佐藤さんの生家である築90年の木造民家を改装した、スローバブックス

武・前:よろしくお願いします。

佐:よろしくお願いします。

武:ブックブックでは宮城に新しく出来た本と出会える場を取り上げてきたのですが…。

前:ずっと前から「丸森に行きますね」って言っていたんですけどね。佐藤さんが「ロバさんが来てから」って言ってたから(笑)。

佐:はい。ロバさん、来てくれてよかったです。

武:オープンはいつだったのですか?

佐:オープンは去年(2016年)の9月21日です。

武:間もなく、1年ですね。

佐:はい。いつにしようって考えた時に、宮沢賢治の命日にオープンしようとなったんです。

前:そうだったんですね。

武:どれくらいの準備期間があったのですか?

佐:前の仕事…消防署を退職したのが、2015年の3月でした。そこから伊達ルネッサンス塾というのに通って…その時、前野さんにもインタビューしましたよね…そうですね、準備はだいたい1年くらいですね。

武:消防署…消防士ということですか?

佐:まぁ、救命士ですね、はい。

武:全然今と関係ないお仕事のように思えますが、お仕事している時から、こうしたお店を出したいみたいなことは考えていたのですか?

佐:うーん、震災のちょっと前から、仕事に対して息詰まるというか、悩んでしまって…2015年くらいまで…。

武:震災の前からだとけっこう長いですよね…。

佐:はい。それで、仕事というのは自分を表現するものだということを考えたり、そんなことを書いてある本を読んだりして…そんなことを考えているうちに、両親がなくなったり、結婚という驚きの出来事があったりして、これは転機だろうと思って、2015年の3月31日に思い切って退職しました。

武:奥さんとの出会いが後押しをしてくれた?

佐:はい。

前:消防署には何年働いていたのですか?

佐:27年、勤めました。

前:えー!すごい。

佐:長いですかね?

前:長いですよぉ。

武:それだけの時間働いていて、なにを悩んでしまったのでしょう?…話していただける範囲でいいのですが。

佐:うーん…。仕事に対しての向上心が薄れてきてしまったんですね。人を救うための訓練とかもあるのですが、そうしたことにも疑問が出てきてしまったり…年齢的にも役職について、現場などでも全体を見なきゃいけなくなったりして…。

武:なるほど…いろいろ考えて、このままでいいのか、と。

佐:そうですね。

武:そんな中、奥さんにも相談したら、賛成してくれて、って感じですか?

佐:具体的に、というより、妻はこの家に可能性を感じる、みたいなことを言っていて、ここでなにかできないか、と考えていたようですね。妻は芸術性がある人なので。

前:奥さんは絵を描くんですか?

佐:絵を描いたり、こういう看板をつくったり(看板を指す)。

前:そうなんですね。古本とカフェというのはどういうことから?

佐:そうですねぇ…私は本が好きなので…なんていうか、ロバのいる本屋というイメージはあったんですよね。

前・武:おぉー。

佐:なので辞める数年前から、本に関わる仕事をしたいとは思っていました。

前:ここでやるっていうのは、ハードルが高くはなかったですか?

佐:そうなんですけどね・・・他でやるというのもあまり考えられなくて…田舎で静かにやりたいと思っていて…。

前:他の場所も考えましたか?

佐:ちょっと考えましたけど、やっぱりここかなと思って・・・お客さんはあまり望めませんけど、ここでのんびりやりたいなと思いました。

前:実際にここに来れば、この本棚を見て、ゆったりして、気持ちよく過ごされるんじゃないかなと思います。

武:1年近くやってみて、お客さんはどうですか?

佐:そうですね…多くて10人くらいですかね。

武:一日に?

佐:はい。

前:えー、すごい!

佐:すごいですかね(笑)。ロバさんが来てから、新聞などでも取り上げてもらったので、来る人が増えましたね。

前:それは丸森の方が来るのですか?

佐:いや、他の地域の方たちですね。

前:地元の方は来ない?…ここをどう思っているんでしょうか?

佐:やっぱり、珍しいことしているって思っているんじゃないですかね…「よく、ここに出したね」と言われますし。

前:丸森は観光客は多いですか?

佐:そうですねぇ…齋理屋敷(江戸時代後期の豪商の屋敷。町が寄贈をうけた)には観光客は来ますね。

前:そこへ来た人たちがこっちに寄るというのは、ないのかな?

佐:そうですね・・・ちょっと離れていますからね。あと、カフェでもやればいいのでしょうけど・・・。

前:カフェはやる予定なんでしたっけ?

佐:いや、ここは水道水ではなく、湧き水なのでできないんです。

武:そうなんですね!

前:どこの湧き水?

佐:このちょっと上にあるんですけどね。湧き水なので震災の時なども止まることはないんですけどね。

武:それは・・・普段の生活ではOKで、お店ではダメなんですね。

佐:いろいろ設備をつかって、浄水すればいいんですけどね。

前:先ほど言っていたけれど、準備に1年…ここの本はほとんどご自分で持っていたものですか?

佐:はい、そうです。

前:で、少しずつ、増やしていった…買取で?

佐:意外と寄贈していただくことも多いんです。

前:そうですか。そんなに仕入れというのはないんですね。

佐:そうですね。もちろん、寄贈していただいた本、すべてを置くわけではないのですが。

前:そこが寄贈の難しいところですよね。

武:えっと、ここはたしか月に2回のオープンでしたよね?

佐:いえ、週に2回です。

武:うわぁ、失礼しました。来る途中の車の中で、前野さんが月2回って言うから(笑)。

前:あれ、ブログの見方、間違えたかな。

佐:だいたい、水曜日と土曜日に開けています。

前:あっ、ごめん(笑)。

武:もう(笑)・・・基本は水曜と土曜で・・・何時から何時までやっているのですか?

佐:10時から16時までですね。

前:冬は休んだんでしたっけ?

佐:はい。1月から2月は休みましたね。

前:そうなんですね。

佐:冬はやはり開けるのが大変な場所なので。

武:みなさん、やっているかどうかを確認してから来る感じですかね?

佐:ブログにやっている日が載っているので、それを見て来てくれる感じですね。

前:その空けている日以外はなにをやっているのですか?

佐:家の中や外の掃除…あとは耕野小学校という地元の小学校があるのですが、夕方、学童保育といって、見守りなどをしていますね。

前:そうなんですね。

武:この週2回というペースはご自分の中で、なにかあるんですね?

佐:もっと開けた方がいいのかなとも思いますが…あまり、お客さんを望めない部分もありますし、掃除などのメンテナンスもしっかりやりつつ、となると、今はこのペースがいいのかなと思っています。

武:そうなんですね。それと、先ほど、オープンするにあたって、宮沢賢治の命日に、というお話でしたが、宮沢賢治の存在は大きいですか?

佐:私というより、妻が好きなんですね。宮沢賢治の本はすべて読んでいて…。

前:そういう話を聞くと、お店はお二人で作っている、ということですか?

佐:二人で話し合って、いろいろ決めていますね。

前:奥さんがお店に立つこともありますか?

佐:はい。本の選定などは私がやることは多いのですが、他のことは妻が見てくれたりしますね。

前:本はかなりテーマを絞っているような気がします。

佐:はい。食の安全や自然に関するもの、料理の本や絵本、原発のことについて書かれたものなどが多いですね。あとは小説系というか文学のものもありますね。

武:前のお仕事を辞める時のお話で「仕事というのは自分を表現していくもの」という部分がありましたが、そうした意味では、今は自分を表現できているというのがありますか?

佐:掃除するのが好きで、本を磨いたりするのも好きなんですね。古本なので、汚れたものもあるのですが、それをきれいにしたりしながら、こんな作家もいるんだ、とか思いながら…そうやって勉強にもなるし、そういうのが合っていると思いますね。

武:そうなんですね。えっと、前野さんのブックカフェ講座に参加したということですが、その時はもう「やる」と決めていたのですか?

佐:そうですね、もう仕事もやめていましたし…本に関しての仕事…古本屋さんをやってみたいなぁと思っていましたね。

前:そうでしたか。あの時の講座に来てくれた人がもう4人も開業してくれたんですよ。

佐:えー、そうなんですか。

前:すごくない⁉

<ふぅーふぃー> ここでロバの鳴き声!

武:お腹、空いたのかな?

佐:ジャムさん、大丈夫ですよー。(窓から外に向かって)

前:敬語なんだ(笑)。

武:(笑)…丸森で暮らして、お店を出して、丸森には愛着がありますか?

佐:昔に比べると、最近の方がありますね。年齢を重ねるにつれて、田舎の良さがわかるというか。都会にはない静けさや自然の良さがいいんですよね。

前:自然に関しての興味などは昔からあったのですか?

佐:そうですね。アースデイのような環境に関するイベントに行って、いろいろ調べたりしていましたね。

武:奥さまについて訊いちゃうと…どうなんでしょう、奥さまの影響はありますか?

佐:どうなんでしょう…今も敬語で話していますが…。

武:そうなんですか!

前:なんか、似合う(笑)。さっきのロバさんに話したみたいに。

佐:妻はよもぎを取ってきて、ジュースにしたり…自然が好きで、そういう感じで合うんじゃないですかね。

武:いろんな意味でパートナーとして大切な存在なんですね。

佐:はい。

武:あっ、話が戻りますが…ブックカフェ講座に出た時の話だった(笑)…講座に出てみて、どうでした?

佐:その時はまだ家でやるとは思っていなかったですね。どこがいいか…丸森でやれるのか…カフェはできるのか…本の仕入れはどうしたらいいか…いろいろ悩んでいましたね。

前:そうかぁ。

武:そこから現実になっていくのはどんな過程があったのですか?

佐:そうですねぇ…ちょうど家の修繕があったり、うまく本を仕入れることができたり、妻のアドバイスで本の置き方…面出しして、ゆったり見せた方がいいとかを聞いたりしていくうちに、見えてきた感じですね。

前:そうなんですね。

武:では、これから、というか先を考えて、目標というか…やってみたいことなどはありますか?

佐:そうですね…やはり、小さいながらも続けていくこと。持続可能にしていくということがありますね。それと、如何にしてお客さんを呼べるかというもありますね。

前:あと、イベント出店していますよね?アースデイとか。

佐:はい。もっと、そうして出店とかできたら良いんですけどね。

前:それはお店と同じくらい大事な感じですか?

佐:そうですね。お客さんと知り合えますからね。

前:大変ではないですか?

佐:大変なこともありますが、いつもとちがうグッズを作ったり、いろんな方と知り合えたりと、楽しいことも多いですね。

前:なるほどー。開業してすぐ古書組合に加入して、毎回市場に参加されていますが、組合に入ろうと思ったのはどうしてですか?

佐:組合に入った理由は、本の仕入れを充実させたいと思ったからです。
自分の蔵書や古本屋さんからの購入だけでは、本の品数やジャンルも含め限界があると思いました。
それと古本屋さんの世界をのぞいて見たいとも感じていました。
絵本など中々欲しい本が手に入りませんが、本の知識や古本屋の経営なども含め、
地道にやっていきたいです。

前:インターネットでの販売はどうですか?

佐:ネット販売というのがよくわかっていなくて…でも、やった方がいいとは思っています。

前:では、いずれやる感じですか?

佐:やりたいですね、やっぱりネットでしか出ない本もあるでしょうし…前野さんはやっていますか?

前:たいした額ではないですが、やっていますよ。

佐:そうなんですね!どんなところがいいんですかね?

前:ネットでしか売れないような本がありますからね。より専門性が高い本とか…ネットで本を探している人がいるので、ニーズがありますね。

佐:そうなんですね。

前:がっちりやるには労力と場所が必要なのでむずかしいです。それも踏まえて…お店を週5日営業して、ネットとイベントもやって…いろいろ悩みながらやっていますね。

佐:そう考えるとすごいですよね。週5日開けて、本の仕入れもして、カフェの仕込みもして、イベントに出たり、こうしてここにきて話をしたり…。

前:まあ、あらためてそう言われると(笑)。

武:やり方をどう考えていくか…ということでもあると思いますけどね。

前:家賃がなかったら、いいなぁとかは思ったりするけど…ウチは自宅も賃貸なので家賃が二重あって。まぁ、街中でやるというのを選んだ…スタイルですよね…どういう風にやっていきたいか、ですよね。

佐:なるほど。

前:どういうスタイルでやっていきたいか、というのと、どれくらい売り上げを作っていきたいか、というのはタイヤの両輪みたいなものだと思うんですよね。私はお金の大きさって思想を生むと思っていて…お金って悪者ではないんですよね。その規模が生活スタイルに関係してくるから、そこをしっかり考えることは商売において大事なことだと思います。

佐:そうなんですね(考え込むように)…。

前:これは金額や規模が大きいからイイとか悪いではないんですけどね。

佐:目標の立て方なんですね。

武:先ほど、イベントに出て、お客さんを増やしていかなきゃって話していたんですけど…佐藤さんの生活と営業のペースでは少し難しいのかなとも思ってしまうのですが…これはいい意味でもあるんですが、どうでしょうか。

佐:そうなんですけどね…ここでやっていても、人がなかなか来ないですからね…地元も人も来ないし…なので、自分から出ていくっていうのもありますね。

前:逆にいえば、地域のコミュニティになっていきたいというのはありますか?

佐:うーん(考え込む感じ)…。

前:たとえば、地域の人が集まる場所に、っていうのであれば、丸森の歴史や地域の魅力がわかるもの…書籍だったり、資料だったり、映像だったりが置いてある、というのもいいかもしれませんね。

佐:あー、なるほど。

前:そういう資料館的な役割は、地元の人だけじゃなく、他所から来た人も、ここに来れば、丸森がわかるってなるからイイと思います。もちろん、丸森は行政も観光に力を入れていて、それはそれで魅力を伝えてはいますが、ここでは行政にはできないこと…古本屋ならではの視点でそれを考えていくのもアリかなと思います。

佐:はい(感心している感じ)。

前:ここは佐藤さんの城だから、思いっきりやってみてもいいと思います。良い羽目の外し方というか。

佐:羽目を外すのが苦手なんです。

前:(笑)そうかぁ!…私みたいには外さなくてもイイんだけどね。

武:佐藤さんはむずかしいと思います(笑)。なので、佐藤さんが羽目を外さなくても、たとえば、他の丸森の方で、ここでなにかやりたい方に場所を提供するとか…正直、丸森の日常の中で、人を取り込んでいくのは難しいと思うんですね。で、それでイイとも思うんです。ただ人が集まるようになっても煩わしくなってしまうかもしれないし…でも、なにか話さなきゃいけない時にここに集まるとか、たとえば、アート系のイベントなどを考えた時に奥さまとなにかやるとか、そういう会場のひとつになっていくといいのかもしれませんね。

佐:たしかに、イベントはなにかやりたいとは思っていますね。

武:必ずしも、やるのがイイとは思いませんが、地域の人や他所から来た人が交流する第一歩にはなるのかなぁ、と思って。

佐:コミュニティスペースとして利用してもらうのは、たしかにイイですよね。イベントもなにかやれればいいんでしょうけど…小さくても…。

武:最初に話したように、自分を表現できる仕事場で、のんびり、静かにやっていくというのは、ほんとうにイイと思います。と同時に、お客さんを呼ばなきゃいけない、というのも大事なことだし、その辺りのバランスがどうなっていくのか、面白いところでもありますよね。

佐:そうですね。

前:本屋ってどんどん少なくなってきていて、ネットで買う人がこれからも増えていくと思うんですよね。それは確実に。そうした中、本を買う目的のためだけに本屋に行くのではなく、本のある空間に行きたいってなっていくと、田舎も都会も関係なくなって、むしろ、こうした長閑な良い空間で本に接することも注目されてくると思います。

佐:なるほどー。

前:それは商売としては成り立ちづらいかもしれないけど、そうじゃない動機で始める人は増えていくかもしれません。どうしても、商売を優先に考えると、都会の方が人が多いので成り立ちやすいけれど、もうそうじゃない場所に本屋ができてきているので…

佐:たしかに仙台の書店も減ってきましたね。

前:佐藤さんはそうした状況…本屋が少なくなってきていることなどを考えたりすることはありますか?

佐:そうですねぇ…みなさん、やはり情報に縛られているような感じはしますね。どうしてもネットに関心がいくというか…ほんとうはそうした中、ゆっくり本を読む時間が持てればいいと思うのですが…。

武:ここが、ちょっと立ち止まれる場所になっていけるとイイですね。

佐:はい。ただ、さっきお話してもらったように、本だけではなく、資料館的な感じやカフェみたいな感じもアリかなと思います。

前:足を運ぶきっかけ、になりますからね。たとえば古本屋って言われた時に、みなさんが持つイメージはそれぞれだと思うんですよね。所謂昔からある街の古本屋さんのイメージを持つ人もいれば、リサイクルショップのような大型店を思い浮かべる人もいて…もしかしたら、古本屋にはあまり良いイメージを持ってない人もいるかもしれません。だからこそ、ここのお店として、なにかを伝えていった方がいいと思うんです。森の中の古本屋さんとして、みなさんが持つイメージと佐藤さんが伝えたいイメージが合えばいいのですが…やはり、そこはここにしかないなにかを伝えていくとイイと思います。

佐:なるほどー、そうかもしれませんね。

前:そういうイメージというか、伝えたいことの難しさ、大事さってあると思わない?(武田の方を向いて)

武:うーん、そうだなぁ…前野さんは火星の庭というハードな古本屋さんをずっとやってきて、ぼくも自分の活動をやってきて、その中でBook! Book Sendaiを二人で続けているわけですが…なんて言うだろう…ブックブックは舐められているようなところがあると思うんですよね。本好きな人たちからは…「本のイベントなんてやれるの?」みたいな感じで。でも、それは意図したところでもあって、ブックブックは良くも悪くも敷居を低くしていこうというのがあったんですね。本をディープに好きな人は「イベントはどうでもいいから、おもしろい本、ほしい本を手に入れられればいい」となるわけです。それももちろん、わかるのですが、それはまず置いておいて…。

前:そう、ふだん本に接していない人達にイベントなどで、交流したり、あまり知られていない街で起きていることなどを紹介したり、ということだったから。遠回りだけど、最終的に本を手にしてほしいという想いで。

武:そうなんですよね。一ヶ月に何冊も本を読む人からしたら、ブックブックは物足りない、だけど、一ヶ月に一冊くらいは本を読んでみたい、一年に一冊くらいって人に対しても入り口になる。もちろん、これはどっちが良くて、悪いってことでもないし、そのどっちもがほんとうの姿でもあって、一ヶ月に一冊の人が2、3冊になってくれればいいし、その時にたくさん読んでいる人の本の読み方とかに触れることになるかもしれない。そんなことを考えてはやってきたんですね。ブックカフェ講座も、かっちりとして敷居を高くしたら、もしかしたら参加者は減ってしまったかもしれない…だけど、開かれているとはどういうことかを考えていくというのはありますよね。

前:そうだよね。わたしも本業の火星の庭とはつながっているけれど、一致はしないで、どこか区別してやっています。お店は本があるところを目指して来てくださる方へ向けていて、Book! Book! Snedaiは本のないところに本を置いたり、本にあまり興味のない人も含めていろいろな人へ本を届けたいと思ってやっています。いつかは混ざり合ったらいいなと思いながら。

武:だけど、続けてきて、そこは思った以上に混ざっていかないというのがあって、ある程度はわかってやっていたつもりでも、やはりめげてしまう部分もあって…どっちも大事ですよね、って伝えるのが難しい…。スローバブックスも、来ればすごい良いところだってわかるし、今日も来て、すごいなぁと思いましたが、やはり、ここに来てもらうまでのこともすごい大事なんだと思います。

前:そうだよね。来れば、良いところってわかるよね。

武:なので、一年に一度でも二度でもいいから…今日はクッキーがありますとか、水がダメなら、誰かと一緒に企画して、今日はコーヒーが飲めます、みたいなここに来るまでの、なにかを作れるとイイのかなとは思いますね。

佐:あー!

前:そう、スローバブックス祭りとか、ね。なにか、きっかけ作りができるとイイですよね。

武:そうそう、夏休みはここで宿題してもイイですよ、とか…

前:そう、そして子供向けの本がその時は置いてあってね。

佐:なるほどー。

武:たまに背伸びしてもいいのかなぁ…みたいなね。

前:イベントっていうと、大きく感じてしまうと思うんですが、無理してやることではなくて、5~6人のお客様がいらして話すのもイベントなんですね。普段の形を大事にしながら、ときどき間口を広くしてみる…そうして、この空間がどんなことができるのか、求められているのか知っていくのは良いと思います。

佐:それは確かにそうですね。

武:佐藤さんらしく・・・スローバブックスらしく、なにかやっていけるとイイですね。ぼくは今日ここにきて・・・思ったのは、佐藤さんはプロだなぁ、と思ったんですね。別に審査しに来たわけじゃないですよ(笑)。空間の作り方や什器のこだわり、本の選書、配置など、いいなぁと思ったんです。で、もちろん、前野さんも・・・火星の庭もプロですよね。どっちがすごいじゃなくて、どっちも大事だと思うんです。街にはどっちもあってほしい。だけど、これが自分の家で趣味でやっているとなるとお客さんもそういう付き合い方しかしなくなると思うんですね。お客さんもお客のプロとして、ちゃんとお店に行ってお金を使わなくなっちゃう・・・それはなかなか言葉にできないことだから、難しいんですが。

佐:あー!そうですね。それはわかります。続けていけるように、無理せずにやっていきたいですね。

追記:
佐藤さんの佇まいがスローバブックスと同じく、控えめで、こちらの言葉を待っているという感じがあり、ついつい武田さんとわたしが熱く(笑)なってしまいましたが、佐藤さんの雰囲気が伝わるといいなと思います。このインタビューの後、スローバブックスでイベントがありましたと、佐藤さんから報告が届きました。阿武隈川ほとりの町、丸森。ぜひ皆さん、宮城県南部の丸森町へ、スローバブックスへ、遊びに行ってみてください。(前野)

佐藤さんから。
9日(土)の夜に店内にて「月と音楽とブータン」というイベントを実施しました。
秋の夜長、琴やギターそして三線の音色が静かに流れました。
場所の他に、玄米と雑穀のおにぎりを提供しました。
20人強(地元の人も含む)の方が来ていただき無事終了しました。

 

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ブログ
「スローバブックスのスローな日々」
http://slowba.exblog.jp


ここまでのインタビュー記事一覧

2016年度と2017年度、Book! Book! Sendai(以下B!B!S)は、
前年度まで続けてきたイベント運営の活動を一旦お休みして、
あらためて、
B!B!Sの最初のテーマであった「街で本と出会う」ことに目を向け、
今、街で起き始めていることを調べ、考え、
このB!B!Sのwebサイトを中心にみなさんに伝えていけたらと思います。

東日本大震災から数年が経過し、
宮城県のいろいろな場所で、本のあるスペースを作る動きが出てきています。
今年度のB!B!Sでは、それらのスペースを作った/作ろうとしている人々に
取材をさせていただき、発表していきます。

★第1回は、
宮城県南三陸町の「みなみさんりくブックス」(2016年7月31日UP)
http://bookbooksendai.com/?p=1483

お話:みなみさんりくブックス/「かもしか文庫」栗林美知子さん
聞き手:Book! Book! Sendai 武田こうじ

★第2回は、
宮城県石巻市の「石巻まちの本棚」(2016年9月3日UP)
http://bookbooksendai.com/?p=1537

お話:石巻まちの本棚/勝邦義さん、阿部史枝さん
聞き手:Book! Book! Sendai 前野久美子

★第3回は、
宮城県多賀城市の「絵本図書室ちいさいおうち」(2017年3月2日UP)
http://bookbooksendai.com/?p=1602

お話:絵本図書室ちいさいおうち/佐々木優美さん
聞き手:Book! Book! Sendai 武田こうじ、前野久美子

★第4回は、
仙台市宮城野区小田原のカフェのある絵本屋『メアリーコリン』(2017年5月26日UP)
http://bookbooksendai.com/?p=1637

お話:メアリーコリン/阿部理美さん
聞き手:Book! Book! Sendai 武田こうじ、前野久美子

     

     ☆それぞれの画像クリックで該当記事へ移動します!

     ☆第5回も、もうすぐアップ予定です!

     

      【LINK】

     みなみさんりくブックス
     http://minamisanrikubooks.tumblr.com

     石巻まちの本棚
     http://bookishinomaki.com

     絵本図書室ちいさいおうち
     http://ameblo.jp/tiisaiouti116/

     メアリーコリン
     http://www.marycolin.com


メアリーコリン(仙台市宮城野区)インタビュー

お話:メアリーコリン/阿部理美さん
聞き手:Book! Book! Sendai 武田こうじ、前野久美子
2017年4月10日インタビュー

仙台の中心部からちょっと外れた街の中にこっそりと、絵本のブックカフェが登場しました。今はまだ、こっそりだけど、ゆっくりと町並みに溶け込んでいって、道行く人が中を覗き、ちょっとドキドキしながら入ってきて、絵本をめくりながら、自分の時間を楽しんでいます。

カフェをつくったのは阿部理美さん。Book! Book! Sendai(以下、B!B!S)のスタッフでもあって、なんと、B!B!Sの企画「ブックカフェ講座」の受講生でもあります。そんなわけで、ぼくたちとしても、このブックカフェの誕生はとてもうれしいのです。

その辺りは、ぼくより前野さんの方が熱く語ってくれると思うので・・・前野さん、一言お願いします。(武田)

 阿部さんとは2010年のB!B!Sが主催したブックカフェ講座で初めてお会いしました。受講生からどんなお店をやりたいか考えてもらったとき、阿部さんはとても具体的だった記憶があります。たいてい開業講座をやっても実際にお店を作る人は少ないなか、阿部さんはその後B!B!Sのスタッフになって、ときどき会っては経過を聞くと、仕事を辞めてからはカフェでアルバイトをしたり、イベントに出店したりして、着実に実現へ向けて進んでいるようでした。なんというか、阿部さんは外から見た感じは柔らかで控えめなイメージですが、意志の強い方だと思います。それでとうとうお店をオープンしたと聞いて、他人のお店なのにやったーと万歳したい気分になりました。阿部さんのつくったお店は、看板からコーヒーカップ、並んでいる本までこれしかないという感じで、もうずっと前からそこにあったような自然な佇まいのお店でした。いろいろと紆余曲折あったと言うけれど、阿部さんがお店をやることは自然に決まっていたことなのでしょう。メアリーコリンと阿部さんは似合っています。そう感じつつも、これまでのお話を聞いてみました。(前野)

前:いつ頃からお店をやりたいと思っていましたか?

阿:B!B!Sのイベント・・・stock/吉岡さんたちのブックカフェ講座・・・に行くちょっと前だと思います。

前:最初からブックカフェを開きたかったのですか?

阿:ブックカフェをというよりも、本に関わる仕事をしたいというのと、カフェの仕事をしたいというのがあって・・・それを両方叶えるとなると、ブックカフェだと思ったのです。塩竈の図書館で働いていたので、本に関わる仕事はしていました。カフェとなると、いつからしたかったのか、はっきりはしないのですが、B!B!Sのブックカフェ講座を受けに行った時はそう思っていましたね。

前:図書館の仕事は何年やっていたのですか?

阿:開館準備室の時も入れると17年かな。出たり入ったりしながらですが。

武:そんなにいたんですね!

前:図書館の仕事はどうでしたか?

阿:楽しかったです。周りの方に恵まれて、良い職場でした。あらゆる方に必要な情報を提供できる公共図書館という施設は、なんていい施設なんだろうと思っていましたし、仕事としてやりがいも感じました。

前:図書館の仕事を極めようとされていたんですね。

阿:そういうつもりではがんばっていました。良い図書館員になりたいと思って。

武:図書館の仕事のやりがいというのはどんなところですか?

阿:あのぉ(考えながら)・・・利用者の人がきて、なにかを探している・・・それに一所懸命応えるというのが・・・当たり前ですが、やりがいがあり、楽しかったです。なんていうか・・・役に立っている感じがあるというか。

前:図書館の仕事の中で、本に対しては、どうですか?

阿:そうですね・・・。本、そのものを考えるとどうなんだろう・・・。

前:本、そのものというより、人との関わりの方が大きかったのでしょうか?

阿:自分の好きな一冊の本があっても、図書館の仕事の中では、それよりも全体を把握して利用者に伝えていくということが大切でした。図書館の仕事は本好きだから働くというのとは違うと思っていました。個人的には、本に触れた時の手触りとか、めくっている時の感じとか・・・そういうのが好きで、本に触っていると不思議と落ち着く感じがあって。そういうことも含めて、図書館の仕事が好きでした。

前:うんうん。

武:ちょっと気になるのですが、図書館のお仕事って、とても忙しくしているイメージがあって・・・みなさん大変そうな感じがするのですが、理美さんの話だととても良さそうで・・・街の図書館というのは、その街の雰囲気にも比例しているのですかね?

阿:街の大きさとかは関係していると思いますね。あと、私たちは開館前からいたので、どうしても思い入れができましたよね。なにも入っていない棚に本を入れていくというのに立ち会うというのは、なんとも言えないものがありました。

武:そんな中で自分のお店を作っていきたいという流れになるのはどういう感じだったのでしょうか。

阿:それはいくつかありますが・・・まずは絵本のなかにいたい、絵本のなかで暮らしていたいというのがあって・・・。

武:でもそれは図書館でもできるのではないですか?

阿:うーん、仕事を続けていると、それだけではなくなってきますからね。自分のイイと思うことだけではできないし、やりたいことだけやるわけにもいきませんから。

武:このままではみたいな・・・感じがあったのですか?

阿:働いていると、時間の大半をそこ(職場)に費やすから・・・残っている時間は少ししかなくて・・・自分のやりたいことを思いっきりやってみたい・・・もしかしたら、その気持ちだけかもしれません。

武:ブックカフェ講座に出た時はどう思いましたか?

阿:やっぱり、楽しそうだなって思いましたよね。

前:そう思ってもらえたのはよかったです。吉岡くんはけっこうシビアなことを言ってましたが。

阿:それも楽しそうって思いました。

前:どんなところが?

阿:一つ一つにすごいこだわりがあって・・・こんなお店あるんだって驚いて・・・でも、それがとても楽しそうに思えたんです。

前:なるほど。じゃあ参加して、ますますやりたい気持ちになれましたか?

阿:はい。

武・前:おぉー。

前:これは今日のポイントだね(笑)。B!B!Sのブックカフェ講座を受けて、良かった!って(笑)。

武:ほんとだね(笑)。でも、それで、けっこうできないと思ってしまう人もいますからね。こんなにこだわってはできないって。

阿:だって、それが自分のやりたいことだったから。自分のいいと思うモノ・コトだけでできている空間って、いいじゃないですか。

前:ああ、そう思えるのは、お勤めしていたというのも大きいかも。で、実際に動きだすのはそこからちょっとかかるわけですよね。

阿:そうですね。現実的には、仕事をすぐに辞められるわけではなくて・・・。

前:それは仕事のポジション的なことですか?それとも、家計的なことですか?

阿:家計的なことですね(笑)。時期を待ちました。

前:なるほど。震災の影響もありましたか?

阿:そうですね。たしかに、それもありましたね。(職場が塩竈だった)

前:話がちょっと戻りますが、ブックカフェ講座を受けて、B!B!Sのイベントも手伝ってくれたんですよね?

阿:だって、講座を受けた人は(イベント当日)サンモール一番町に本を持っていって、カフェの店員もするっていうのが条件だったんですよ。

武:えっ、そうなの?

前:そうだった(笑)。

阿:講座に行く時は、そのイベントに行かなきゃいけないっていうのもわかっていなかったんですけどね・・・。

前:詐欺みたいだね(笑)。

武:ほんとそうだ(笑)。

前:まぁ、実践も大事ということで。

阿:行って、自分の棚をちょっと作ればいいのかって思っていたら、なんか、エプロンをつけられて(笑)、いきなりカフェの店員になってしまったんです。そんなつもりじゃなかったから、エプロン事件はほんと、衝撃でしたよ。

前・武:ヒドイね(笑)。

武:でも、無理やりな感じになっちゃいますが・・・ぼくたちとしては、B!B!Sを手伝ってくれていたメンバーで、ブックカフェ講座を受けてくれたメンバーの理美さんがお店を出してくれたのは、感慨深いものがありますよ。本人は嫌かもしれないけど(笑)。

阿:そんなことないですよ。そう言ってもらえると、すごい嬉しいです。

武:お店できるのが待ち遠しかったんです。

阿:でも実際にやると決めてから、こんなに時間がかかるとは思わなかったです。

武:なにがそんなに大変でしたか?

阿:物件選びですね。

武:どれくらい見たんですか?

阿:30くらいです。

前:最初は塩竈で考えていた?

阿:多賀城とか、七ヶ浜とかも考えていましたね。

前:そのエリアだったんですね。

阿:はい。とくに塩竈近辺で探してはいて・・・その中で、塩竈の物件でイイものに出会えて・・・ほとんど決めていたのですが、突然ダメになってしまって。まるで失恋。・・・それで、かなり落ち込んでしまいました。

前:そうでしたよね。

阿:そうです。その傷心中に知り合いからここの話があって、仙台は考えていなかったのですが、そんな時だったので見に来て・・・人がたくさん歩いていて・・・あれっ、イイかなぁと思ったのです。

武:お店をやっているお二人に訊きたいのですが。物件ってどうやって決めるんですか?スピリチュアルじゃないけど・・・なんか、閃くものがあるんですか?

前:笑

阿:そうですよね。探している時はどうやったら決められるのかなって思ってましたよ。

武:何件くらい見たら、わかってくるとか・・・そういうのってあるのかなって。

前:うーん、でもやっぱ運というか、出会いだからねぇ・・・100%理想の物件なんてないから。2つ3つ候補があったら、決めてしまうしかないよね。あんまり時間かけていると・・・開業なんてやみくもな熱だから。その熱を持続させるのは大変。迷っている間は無給状態が続くわけだし。

武:師匠からそういうことは言われた?(笑)

阿:そういう指導を受けました(笑)。

武:そして、ここに出会ったわけですね。

阿:ここは人がいっぱい歩いていて・・・なんていうか、前のその失恋した物件の時は建物自体がとても好きで・・・だけど、場所は奥まっていたから、そこに来る人を想像していなかったのかなと思って・・・ここに来たら、お客さん像が見えてきて・・・。

前:どんなお客さん像があったんですか?

阿:女性が一人でも入ってこれる感じというか・・・働いていて、がんばっていて、子育てもしていて、そういう女性が立ち寄ってくれて、また明日もがんばろうと思ってもらえるお店にしたいって思っていました。ここに来た時に通勤の人たちがたくさん歩いていて、この人たちが入ってきてくれたらなって思ったんです。

前:それは、理美さん自身が勤め人で子育てもがんばってきて・・・前に探していた時はその感じが強かったんじゃないかな・・・自分が行きたいお店を選んでいたんじゃないかな。ここにきて、初めてやる側として、お客さんを迎え入れる場所を見つけられたんじゃないかな。

阿:そうですね。ほんと、そうだ。

武:ここを見てからはどれくらいで決めたんですか?

阿:去年末に初めて見たので・・・。

武:早いといえば早いですよね。

前:内装なども自分でやったんですよね?

阿:プロの力も借りましたが、ペンキ塗ったり、床を剥がしたり、タイル貼ったりは自分でしました。

前:すごいよねー。

阿:楽しかったですよ。

前:私は根気がなくてできないな(笑)。

武:(店内を見て)これを自分でやるのはすごいよね。

前:仕事をやめてからは、2年くらいですか?

阿:はい。でも、はじめ物件探しはそんなに大変じゃないと思ったんです。久美子さんからいろいろ見ておいた方がいいよって言われたんだけど、なかなか条件が合うのはなくて、ほんと、大変だなと思いました。

武:実際にオープンして、どれくらいですか?

阿:今はまだ、正式のオープンではないかな(笑)。

武:そうなんですか?(笑)

阿:えっと、3月15日から3月いっぱいはプレオープンで、4月1日から一応、始めています。

武:慎重だなぁ(笑)。さっき、自分のやりたいことを思いっきりやりたいって言っていましたが、今はどれくらいできていますか?

阿:そうですねぇ・・・今はスタート地点ですね。カフェの居心地の良さもこれから作っていきたいのですが、本に関しても、最低限自分のいいなぁと思うものを揃えている感じで・・・その中でなにか特色というか、極めていく部分を作っていかないといけないと思うんです。

前:メアリーコリンの本棚は「こういうの」っていうのを作っていくわけですね。で、それはお客さんと一緒に作っていくんですよね。店主だけで作っていくんじゃなくて、相互作用で作られていくんだよね。

武:そうなんですね。たまには勉強になること言うね(笑)。

前:(笑)

阿:今はまだたくさんのお客さんが来ているわけではないけど、「絵本のカフェができた」ってことをどこかで聞いて来てくれる方もいて、そういう方は棚を見て、いろいろ感じてくれて、そういうのはうれしいですね。

武:まさにお客さんが作っていくという話になりますね。

阿:はい。

前:棚の作り方はいろいろ変化していきそうですね(新刊の絵本と古書の絵本がある)。なにか・・・おすすめの本にコメントをつけたりしてもいいのかも。

阿:なるほど・・・でも、ポップとかが貼ってあると、くつろぎ感が減少してしまうような気がして・・・。

前:たしかにそうなんだけど・・・なんて言うのかなぁ・・・(考え込みながら)ブックカフェの本というのは、売り物に見えにくところがあって。売りたいという気持ちは押し付けや嫌味にならなければもっと出してもいいと思う。あまり落ち着きすぎると消費力が落ちる気がします。まぁ、自分の店のことも含めて言っていることですが。

武:なるほどねー。

前:消費って刺激っていうか、興奮みたいなところあると思う。例えば、うち(火星の庭)はお店も自宅も賃貸で家族3人が食べていかないといけないから、ちゃんとお金を落としてもらいたいというのがある・・・本音を言うと。だけど、所謂チェーン店のようなやり方はできないわけだから、どうしていけばいいか、いろいろせめぎ合いなんだけど・・・お客さんもお店に入ってきた以上はなにかを見つけて帰りたいっていうのがあると思うんですよね。だから、ちゃんとアピールしなきゃいけない部分があって、ここにある本を回転させたいのか、回転させたくないのか、その辺が見えてきた方がいいと思うんだけどなぁ。

阿:そうですね・・・回転させたいですね!

前:お金とものを動かすのが楽しいと思えるなら、それは全然不純なことではないんだよね。

武:たしかにそうかも、ですね・・・ぼくはお客としてになるけれど・・・最初は、正直、付き合いで行くから、それこそ何か買ってあげなきゃと思っているし、それからリピーターになっていくとまた違った買い物がしたくなっているというのはありますね・・・そういえば・・・火星の庭に行くと、いろいろ薦められていつの間にか買っちゃっているよ(笑)。

前:(笑)さわやかな押し売りって大事ですからね。

阿:それがまだ・・・できない(笑)。

武:もちろん、ここでのやり方を作っていく、というのもあるもんね。

前:そう、できれば買ってほしいって感じでね。

阿:そうですよね。自信を持って選書した本ですもんね。買って、家に帰って、読んでほしいと思いますよね。

武:それがさっき話した、自分ではなく、お客さんが作っていくというやつですね。すごく繊細なところですよね・・・自分のお店だけど、自分だけでは作っていけないというのは・・・。絵本カフェだけど、大人がくつろげるところにしていきたいというのもおもしろいですよね。

阿:そうですね。親子で来てくれて、本棚を見てくれるのも、うれしいけれど、仕事や子育てをがんばっているお母さんが一人でちょっと立ち寄ってくれて、落ち着ける時間を過ごせるというか、自分を取り戻す時間にしてもらえたらといいなぁと思います。

武:最後にお店の名前の由来を教えてください。

阿:MARY(メアリー)とCOLIN(コリン)は、児童書『秘密の花園』の主人公の名前です。『秘密の花園』は、親の愛情を受けずに育ち、心が傷ついている少女メアリーと少年コリンが、荒れ果てた庭を手入れして再生させるなかで、心も体も健康になり、生きる力を取り戻す、癒しと再生の物語です。この店に立ち寄られた方が、ほっと一息ついて、また明日がんばろうと思えるような、そんな場所になるといいなと思って付けました。
『秘密の花園』を読み返した時に、私の気持ちにすごくぴったりしたので、ずっと前から店名に決めていました。

      ◇

BOOK WITH CAFE MARY COLIN
カフェのある絵本屋 メアリーコリン
〒983-0803 宮城県仙台市宮城野区小田原1丁目9-28


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