【ちいさな出版がっこう】第2回講義
ちいさな出版がっこう 第2回
テーマ【どうやって本をつくりつづけるか】
8月19日(日) 14:00〜17:30
せんだいメディアテーク7F スタジオb
真夏の昼下がり
第2回となります、ちいさな出版がっこうが開講しました。
夏休みに授業があるなんて、特別授業みたいでわくわくします。
●立花文穂さん●
アーティスト、デザイナーでもある立花文穂さん。
「美術・写真・ことば…さまざまな表現をぐちゃっとまるめた紙塊」というキャッチフレーズの、こだわりの雑誌『球体』の編集をしていらっしゃいます。どんなこだわりなのか、といいますと…
以下要約。
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こだわり1 「糸かがりという製本」
糸かがりという製本方法は、糸が切れなければ何年ももち、ページをしっかり開けるという利点を持っている。しかし消耗品でもある雑誌に、コストがかかる糸かがりを使うことは非常識なこととされている。
こだわり2 「不親切!?」
「球体」の特徴は一枚の写真やイラストを大きくどーんと配置するレイアウトにある。見出しは最低限しかなく、一般的に必要とされるリードやタタキが無い。
書店で初めて手に取った人は不親切な印象を受けるかもしれない。しかしそう感じるのは、なんでもかんでも説明的な現代だからではないのか。本屋の棚に並んだ時、いかに目立つかという広告的なデザインに抵抗がある。それでは50年後100年後に、この時代にどんな出版物、雑誌があったのか振り返れない時代になるのではないか。物理的な残し方(月日が経つと、のりが割れて本がバラバラになってしまう)や内容(どれをみても代り映えのない)を含めて。
未来の人が「この時代の人は何を思って本をつくっていたのかな」と言った時に「こんな本が出てきたよ」と『球体』が出てきたらいいなと思う。
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コストがかかる「糸かがり製本」、説明が少ない「不親切さ」という『球体』のつくりは今の時代に即していないかもしれないと語った立花さん。「100年後には理解してくれる人がいるんじゃないかな。」と100年経っても残る本づくりをしていらっしゃいます。まるでタイムカプセルのようですね。
本とはなにか。その根本を考えさせられるお話でした。
続いて
●三島邦弘さん(ミシマ社)●
自らを「小さな総合出版社」と語る、ミシマ社の三島邦弘さん。
書籍から絵本まで出版されています。そしてトーク開始早々、名言が飛び出しました。「本はジャンルで面白いんじゃない。どんなジャンルでも面白いものは面白い。」さすがは総合出版社さん!その自信が見えました。
また「出版は東京じゃなくてもできる」と京都府城陽市に築50年の一軒家をオフィスかまえ、東京のオフィスと行き来しているそうです。体現していますね。「出版は東京じゃなくてもできる」という言葉は地方にいる私たちにとって力強い言葉です。
熱量のお話が面白かったのでご紹介します。
以下要約。
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何かを始めようとすると、ぶあっと熱量(テンション)が上がる。でも次に売れるか売れないかの話になると、熱量が下がり企画がこじんまり、まとまってしまう。始めよう!と思い立った時のわくわく感が消えてしまう。熱量が下がることは、つくり手を疲弊させる。結果はどうであれ、予定調和で終わらせるのはだめだ。本来、人が集まれば熱量は上げていかなければならない。そして一度消えた熱量は取り戻せない。
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「これ面白いんじゃない!?」
という思いつきは誰にでも経験あることではないでしょうか。「これ絶対面白い!面白いに違いない!」あの状態が熱量の高い状態で、三島さんいわく「無根拠の自信」に溢れている状態。
結果をかえりみず無根拠に自分を信じて突き進む、というのは
言葉で言うほど簡単ではありません。でも実際に、そう突き進んでいる方に会ってお話を聞いているとなんだかできそうな気がするー!!と思ってしまいました。きっと三島さんの熱量が伝わってきたせいかもしれません。
ゲスト講師のお話が終わった後は受講生に出された宿題の発表をしてもらいました。主任講師のナンダロウさんが丁寧に的確にアドバイスしてくださいました。
次回までの宿題は「本の見本をつくる」です。
どんな本ができるのかお楽しみに!!
(テキスト:村上美緒)