Category : ちいさな出版がっこう

【ちいさな出版がっこう】第1回講義

 ちいさな出版がっこう 第1回 
 テーマ【どんな本をつくりたいか】 
 7月29日(日) 14:00〜17:30 
 せんだいメディアテーク7F スタジオb 
  
 いよいよ 
 ちいさな出版がっこうが開講しました。 
 受講生、ゲスト講師、スタッフの初顔合わせとなりました。 
 これから半年間、すてきな本づくりを一緒にしていきましょう! 

 ●島田潤一郎さん(夏葉社)● 
  
 小説家を目指していた島田さん。 
 出版社を立ち上げ初めて出した本のエピソードが心に残りました。 
 以下要約。 
 
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 「人生は自分が思っているより短い」と思うような出来事がおこった。 
 従兄弟が突然、事故で亡くなった。おじは悲しみに暮れ、体がひとまわり小さくなったように感じた。そんなおじ、おばのために自分の出版社から本を出して贈りたいと思った。 
 その本は一冊まるごと一編の詩でつくる、という構想があった。 
 頭にぼんやりイメージできるが、かたちにする術を知らなかった。どうしたらいいのか分からなかった。 
 それでも「この人に挿絵を描いてほしい」と思うイラストレーターにお願いした。 
 自分のイメージしたものに近づくため、試行錯誤をくり返した。 
 こうして2年かかって出版した「さよならのあとで」をおじおばはとても喜んでくれた。 
 その時、編集者とはイメージした本をつくるため、いいイラストレーターいいデザイナーをコーディネートすることかなと思った。 
 
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 「こんな本を出したいんだ!」という強い思い、そして妥協を許さない強い意志を感じました。島田さんご本人、夏葉社の本に対して無垢で純粋な印象を受けました。また、ものをつくる上で大切なことは「光が当たっていないこと、誰もやらないことをすることだ」と話してくれました。現在は新しい企画を進めつつ、顔の見える出版社としてブログやツイッターで近況を知らせている、とのこと。 
 ぜひチェックしてみてください。 
  
 
 続いて 
 
 ●羽鳥和芳さん(羽鳥書房)● 
  
 東大出版会(研究の成果や教科書を出版している)では法律専門の編集をされていた羽鳥さん。定年を機に出版社「羽鳥書房」を設立しました。編集の仕事がおもしろくてやめられない気持ちと編集以外の営業や運営といった本を読者に届ける仕事もやってみたいという気持ちがあったそうです。 
 
 羽鳥書房の社員はなんと5人。 
 今のご時世、出版社を立ち上げるだけでも大変なのに正社員が5人もいて大丈夫か、と周りから心配されたそうです。しかし、仕事は外注せず社内で完結させるのが羽鳥書房流。本の装丁はデザイナーに頼むが、校正などそれ以外の出版に関わる仕事はみんなでこなしているそうです。 
 
 なぜ、このようなスタイルをとっているのか。 
 実はそこに、大手出版社がフリーやアルバイトのデザイナーを安く使っている現状があるとのこと。それを見てきた羽鳥さんは「これはおかしい、うちでは絶対にしないぞ」と思ったそうです。この他にも「出版業界のおごり」として、出版社から取次ぎを通して書店に卸すシステムは新規参入を阻止していると語りました。これらを踏まえ「出版業界に未来はない。だけど出版には未来がある」とまとめました。 
 
 羽鳥書房には「法律・美術・人文」というジャンルがあります。 
 でもいろんな人が企画に関わり、ジャンルの幅が広がったそうです。(絵本も出されています!)柱となるジャンルはあるが、一番大事なことは「出したいものを出す」こと。「売れる本」ではなく「私が出したい本」であること。そしてこの人の本を出したい、この人にデザインを頼みたいという、自分がつくりたい本に妥協しないこと、だと語りました。出版不況だと言われているが、手がけた本は重版になっているとのことです。ちゃんとやれば売れるのだと熱心に語っていました。「ちゃんとやる」とは「私が出したい本」にどれだけ忠実であるか、ではないでしょうか。想いを込めた本を読者に丁寧に届ける。出版社の想いがつまった本は読者にも伝わるとおもいます。 
  
 第1回目の授業が終り 
 主任講師のナンダロウさんから宿題が出されました!! 
 え・もうさっそく!?となったのは私だけでしょうか。 
 次回までの宿題は「つくりたい本の設計図をつくってくる」です。 
 まだ妄想のかたちでいい、とのことだったのでどんな妄想が飛び出すか楽しみです。 
 (テキスト:村上美緒) 
 


ちいさな出版がっこう、申込み締め切りました

「ちいさな出版がっこう」はおかげさまで定員になりましたので申込みを締め切りました。多数のご応募ありがとうございました。

 


レポート:「ちいさな出版がっこう」プレ講義&説明会

いよいよ動き出しました「ちいさな出版がっこう」。6月24日、日曜の昼下がりにたくさんの方にお集まりいただきました。

プレ講義では、藤本智士さん(りす代表)、吉岡英夫さん(stock gallery&atelier店主)、「ちいさな出版がっこう」主任講師の南陀楼綾繁さん(ライター・編集者)の鼎談がおこなわれました。

ちょっとご紹介

藤本さんは「人に出会いたい」という思いからフリーペーパーをつくるようになり、だんだんと「編集」が楽しくなっていったそうです。そして取次ぎを通し、全国の書店で販売される雑誌「Re:s」を手がけたそうです。取材では「現場命」をモットーに相手との信頼関係を築くことを大事にしているそうです。そのためにも話しやすい雰囲気、場づくりにチーム全力で取り組んでいる、とのことでした。

吉岡さんは「作っている人の顔が見える地方のリトルプレスをつくりたい」という思いから、小冊子「ふきながし」を発行しています。記事を書くにあたり、大事にしていることは「つくっている人が見える」こと。そのために「書き手(ぼく)の主観的なお店の紹介」をしているそうです。自分の言葉で丁寧に表現することを大事にしている、とのこと。

主任講師の南陀楼さんは、お二人からお話を引き出し、飛びかう専門用語を分かりやすく解説してくれました。来場者の皆さんも熱心に耳を傾け、メモを取っていました。「本づくり」や「出版」への関心の高さがうかがえます。それぞれに心に響く言葉があったのではないでしょうか。

説明会終了後、相談コーナーを設けました。

藤本さんは「編集」の意味を広義にとらえ、プロダクト、街や人を編集することも含むと言っていました。また、吉岡さんはご自身の経験から「メディア(リトルプレス)をつくることで、街とつながることができた」とお話されました。本を編集、出版するということは街と人を、人と人をつなぐコミュニケーションでもあるんだなと、お話を聞いていて思いました。そんな「つながる」すてきな本をこれからつくっていけたらいいなと思いました。

(テキスト:村上美緒)