Category : ちいさな出版がっこう

ちいさな出版市

3月2-3日とせんだいメディアテークを会場に「ちいさな出版市」が開催されます。
そのちらしができました!(クリックで大きく表示されます)
【出版市】

【関連企画】

【ちいさな出版市】

ちいさな出版市とは、「ちいさな出版がっこう」で半年間、本づくりについて学んだ受講生がつくった本の発表、そのほか小出版のおもしろい本をご紹介します。
※「ちいさな出版がっこう」は、出版にまつわる企画、編集、デザイン、流通などについて、出版のプロたちによる講義と実作をおこなう場です。本というメディアを読み手として手に取るだけではなく、誰もが思いを形にして届ける表現方法として身近な営みとなるよう開校されました。

ちいさな出版市
Book!Book!Sendaiが選んだ東北と小出版のおもしろい本とちいさな出版がっこう受講生の卒業制作と講師らが手がけた本たちが集まります。

ちいさな出版市探検
ガイドとともに出版市を探検します。開始10分前にちいさな出版市の看板前にお集まりください。参加無料。
3月2日(土)南陀楼綾繁氏(ライター/ちいさな出版がっこう主任講師) 14:00-15:00
3月3日(日)  吉岡英夫氏(stock gallery&ateller店主/ちいさな出版がっこうプレ講義講師)  14:00-15:00

【ちいさな出版市関連企画】
・会場:Book cafe 火星の庭
・定員:25名 要申込み
・申込先:info@bookbooksendai.com

「ナンダロウさんの本見せナイト」
・日時:2013年3月2日(土)  18:30開場 19:00~20:30
・内容:あれも本? これも本? 「ちいさな出版がっこう」主任講師であるライター・編集者の南陀楼綾繁さんが、これまで節操なく集めてきた本の数々を大量に見せちゃいます。戦前のコレクター雑誌から最近のフリーペーパーまで、「こんな本があったのか!?」と驚くこと請け合いです。
・入場料:1,500円(1ドリンク+軽いおつまみ)

「マダガスカルへ写真を撮りに行く」写真家堀内孝トーク
・日時:2013年3月3日(日)  18:00開場 18:30~20:30
堀内孝(写真家) 聞き手/牧野伊三夫(画家)
・入場料:/1,500円(1ドリンク+マダガスカル風バナナフランべ)
・内容:/東アフリカのインド洋に浮かぶマダガスカル島に惚れ込み、二十数年来足繁く通う情熱の写真家・堀内孝さんの初の著書「四月と十月文庫 マダガスカルへ写真を撮りに行く」(発行/港の人)の刊行を記念したトークとスライドショー。この本企画者で、装画を手がけた旧友の画家・牧野伊三夫さんを聞き手に迎え、現地の美味しいスイーツと音楽も流れるなかマダガスカルをたっぷりと愉しむ夕べ。


【ちいさな出版がっこう】第3回講義

ちいさな出版がっこう 第3回
テーマ【読者にどのように手渡すか】
9月30日(日) 14:00〜17:30
せんだいメディアテーク7F スタジオb
台風が近づく気配を感じながら
第3回目が開講しました。

●中山亜弓さん(タコシェ)●
 東京都中野区、雑居ビルの一角にタコシェがあります。
10坪の店内にはところ狭しとミニコミやZINEが並べられています。タコシェという場所はそれらをつくる者が必ず行くミニコミの総本山として知られています。
 個人の出版物を一般の新刊書店に持ち込んでも、なかなか置いてくれません。取次ぎを通さない直取り引きは、買い切りというかたちが多いので書店では敬遠されます。そんな直取り引きをタコシェでは引き受けてくれます。内容がよっぽどのもの(著作権にひっかかる、個人への誹謗中傷)でなければ、お店に置いてもらえます。そんな間口の広いタコシェだからこそ、ミニコミや同人誌といった個人の出版物が集まり、総本山と呼ばれるようになったのです。お店で取り扱っている本の紹介をしていただきました。
以下要約。
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「こけしの旅の本」…プリンター出力。ぴらぴらの紙を挟んだり、途中でページの大きさが変わったり手製本だからできる遊びがつまっている。

「なにものからの手紙」…長形4号の封筒にわら半紙に出力した小説が入っている。手紙形式の小説。タイトルは全8種類ある。

「未知の駅」…ページをバラバラに印刷所に発注。自分や仲間の手で綴じる。本文はプロの印刷なのに、綴じは小口が揃っていないなどちぐはぐな印象を持つ。

「kalas」…三重県津市を中心とした地域誌。「どうしたら雑誌を続けられるのか」「お金の工面はどうしたらいいのか」といった作者の悩みをものづくりに携わっている知人たちにインタビューする。しかし、このような悩みは活動することやものづくりをする上での普遍的な問題であり多くの共感を得ている。

「ritokei」…離島経済新聞。島を専門に扱うタブロイド紙型の雑誌。新聞としても雑誌としても読める。島のポスターなど付録も充実。

 「ritokei」のように目的や読者層がはっきりしているものは、読者に届きやすい。しかし抽象的、個人的なものなど分かりにくいものほどちゃんとした説明がないと届かない。版形やページ数、作者は誰かといった情報や本の内容を客観的に説明する必要がある。マニアックなものをつくってもいい、ただ雑誌や本をつくる目的はそれらを知らない人に届けることである。かみくだいて、どう魅力的なのかを伝えることが大事である。
 読者の設定(身内だけなのか、世界中すべての人なのか)と読者に手渡す方法(販売か配布か)はつくる時にも気をつけることだが、売る時にはさらに気をつけないといけない。「つくる時と売る時は段階は違うが繋がっている」とナンダロウさんがまとめた。

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 私もこの間タコシェに行ってきました。
すれ違うのもやっと、という店内は紙質や厚さ、版形が異なる本であふれていました。読んでくれと言わんばかりの本、読みたいのならどうぞと隅にたたずむ本もあり、たくさんの本との出会いを楽しみました。講義の中で中山さんが、タコシェで買った本の感想を送り、それをきっかけにその後ご結婚された方がいらっしゃると話していました。「タコシェで出会った二人」と中山さんが嬉しそうに話していたのを思い出します。
 私は先ほどタコシェでのことを「本との出会い」と書きましたが、本の先には必ず人がいるんですね。つくった人がいて、読む人がいて、「人との出会い」の場でもあるのだなぁと思いました。

続いて

●木村敦子さん(てくり)●
 「てくり」は盛岡の生活・文化・伝統を特集に取り上げる地域誌です。発行元である、まちの編集室は「なんかやりたいね」と集まったフリーランスのライター、デザイナー、編集者で構成されています。普段の仕事のスタイルは依頼者から仕事を受けるかたちですが、自分たちが自由に好きなようにできることをしたいと始めたのが「てくり」だったそうです。そんな「てくり」の木村さんのパワフルな語りに力をもらいました。
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『出会い、タイミングは大事』
 「てくり」5号の特集は「盛岡ノートをポケットに」。この特集が組めたのは、出会いとタイミングによるものだったと語る。全国紙の取材を受けていた時、その記者の奥さんがエッセイストとして名高い、木村衣有子さんだった。是非にと紹介してもらった。その頃ちょうど盛岡ゆかりの詩人、立原道造が書いた「盛岡ノート」が復刻された。立原道造は東京から結核療養のため、盛岡に滞在していた。そして同じように東京から来る木村衣有子さんが「盛岡ノート」を手にまちを巡る、これを特集にしない手はない、と思い立ったそうだ。

『場を持つ、ということ』
 「ひめくり」という、まちの編集室がサポートしている店がある。東北に限らず書籍や食べ物、雑貨を取り扱っている。この店というかたちで、「てくり」に関する場ができたのには二つの背景があった。一つ目は、以前から特集に合わせたワークショップを場所を借りておこなっていた、ということ。二つ目は、まちの編集室が編集室と呼べる場を持っていなかったためだ。「編集室に遊びにいきたいのですが。」という問合せを受けるようになり、場を持つことの必要性を感じたそうだ。
 場を持つことで変わったことは、震災後にたくさん取材を受けるようになったこと。目に見える分、取材しやすいのだろうと推測していた。そして「私たちは本を出し、売ることが目的」と語り、イベントを「ひめくり」の店主に回してもらい編集に専念できるそうだ。また、「てくり」を読んで盛岡に来た人が立ち寄れる場となっている。

『モリブロ、というイベント』
 まちの編集室と知人で実行委員をつくり、盛岡のまちを舞台に本のイベントを立ち上げた。普段、面と向かって読者とやりとりをすることがないので、どんな人が読んでいるのか分からなかった。しかし、モリブロではそれをリアルに体験することができた。そして出店した店同士の繋がりが生まれ、開催して良かったと感じたそうだ。ゲストを呼んでの飲み会も楽しみの一つだと語る。
 モリブロは始まったばかりのイベントで何年か続けてみないとどうなるか分からないと語り、とりあえず3回はやることにしている。
 一箱古本市の会場となった桜山神社の参道(昭和レトロのいい通り)の再開発計画があった。まちの編集室は中庸の立場を取りつつも、桜山の特集を組んだり、一箱古本市の会場に選定した。地域誌を出す上で、このような行政に対する住民運動のからみは避けては通れない。いい面でもあり、悪い面でもある。しかし、そこは「てくりの人」として中庸な立場から、編集意図でもある「良さのアピール」をしていく姿勢は変えないと語る。

『熱意』
 読者に手渡す時に大事なことは「熱意だ」と語った。自分がつくったものを人に会うたびに、アピールしていくこと。東北人には苦手な人が多いが、とりあえず「こういうのやってます。」と前に出ることが大切だ。あとは名刺をつくること。きちんと住所を入れ、自分へ繋がりやすくする仕掛けを整えること。名刺、Web、ツイッター、フェイスブック等、個人発信のツールが昔と比べたくさんある。これを駆使すること。そしてできればレーベル名をつけるといい。個人名で活動するより世間からの信頼感が増す。

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以上が要約になります。
メディアをつくると二つのタイプに分かれるそうです。外に向かって発信しつづける人と内面を発表して満足する人。「ちいさな出版がっこう」は12月が最終講義となりますが、がっこうを卒業してもなにかつくり続けてほしいです。

ゲスト講師のお話が終わった後は受講生に出された宿題の発表をしてもらいました。
座学の講義は今回で最後、次回からは実践編になります。
次回までの宿題は「1,2ページでもいいので本番に近いかたちでつくってくる」です。

 

(テキスト:村上美緒)


【ちいさな出版がっこう】第2回講義

ちいさな出版がっこう 第2回
テーマ【どうやって本をつくりつづけるか】
8月19日(日) 14:00〜17:30
せんだいメディアテーク7F スタジオb
真夏の昼下がり
第2回となります、ちいさな出版がっこうが開講しました。
夏休みに授業があるなんて、特別授業みたいでわくわくします。

●立花文穂さん●
 アーティスト、デザイナーでもある立花文穂さん。
「美術・写真・ことば…さまざまな表現をぐちゃっとまるめた紙塊」というキャッチフレーズの、こだわりの雑誌『球体』の編集をしていらっしゃいます。どんなこだわりなのか、といいますと…
以下要約。
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こだわり1 「糸かがりという製本」
 糸かがりという製本方法は、糸が切れなければ何年ももち、ページをしっかり開けるという利点を持っている。しかし消耗品でもある雑誌に、コストがかかる糸かがりを使うことは非常識なこととされている。
こだわり2 「不親切!?」
 「球体」の特徴は一枚の写真やイラストを大きくどーんと配置するレイアウトにある。見出しは最低限しかなく、一般的に必要とされるリードやタタキが無い。
 書店で初めて手に取った人は不親切な印象を受けるかもしれない。しかしそう感じるのは、なんでもかんでも説明的な現代だからではないのか。本屋の棚に並んだ時、いかに目立つかという広告的なデザインに抵抗がある。それでは50年後100年後に、この時代にどんな出版物、雑誌があったのか振り返れない時代になるのではないか。物理的な残し方(月日が経つと、のりが割れて本がバラバラになってしまう)や内容(どれをみても代り映えのない)を含めて。
 未来の人が「この時代の人は何を思って本をつくっていたのかな」と言った時に「こんな本が出てきたよ」と『球体』が出てきたらいいなと思う。

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 コストがかかる「糸かがり製本」、説明が少ない「不親切さ」という『球体』のつくりは今の時代に即していないかもしれないと語った立花さん。「100年後には理解してくれる人がいるんじゃないかな。」と100年経っても残る本づくりをしていらっしゃいます。まるでタイムカプセルのようですね。
本とはなにか。その根本を考えさせられるお話でした。

続いて

●三島邦弘さん(ミシマ社)●
 自らを「小さな総合出版社」と語る、ミシマ社の三島邦弘さん。
書籍から絵本まで出版されています。そしてトーク開始早々、名言が飛び出しました。「本はジャンルで面白いんじゃない。どんなジャンルでも面白いものは面白い。」さすがは総合出版社さん!その自信が見えました。
 また「出版は東京じゃなくてもできる」と京都府城陽市に築50年の一軒家をオフィスかまえ、東京のオフィスと行き来しているそうです。体現していますね。「出版は東京じゃなくてもできる」という言葉は地方にいる私たちにとって力強い言葉です。
熱量のお話が面白かったのでご紹介します。
以下要約。
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 何かを始めようとすると、ぶあっと熱量(テンション)が上がる。でも次に売れるか売れないかの話になると、熱量が下がり企画がこじんまり、まとまってしまう。始めよう!と思い立った時のわくわく感が消えてしまう。熱量が下がることは、つくり手を疲弊させる。結果はどうであれ、予定調和で終わらせるのはだめだ。本来、人が集まれば熱量は上げていかなければならない。そして一度消えた熱量は取り戻せない。

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 「これ面白いんじゃない!?」
という思いつきは誰にでも経験あることではないでしょうか。「これ絶対面白い!面白いに違いない!」あの状態が熱量の高い状態で、三島さんいわく「無根拠の自信」に溢れている状態。
 結果をかえりみず無根拠に自分を信じて突き進む、というのは
言葉で言うほど簡単ではありません。でも実際に、そう突き進んでいる方に会ってお話を聞いているとなんだかできそうな気がするー!!と思ってしまいました。きっと三島さんの熱量が伝わってきたせいかもしれません。

ゲスト講師のお話が終わった後は受講生に出された宿題の発表をしてもらいました。主任講師のナンダロウさんが丁寧に的確にアドバイスしてくださいました。
次回までの宿題は「本の見本をつくる」です。
どんな本ができるのかお楽しみに!!
(テキスト:村上美緒)