(いまごろですが)Book!Book!Sendai2011のご報告

仙台はすっかり秋になりました。

今年のBook!Book!Sendaiのことを書くには、ほかの多くの出来事と同様に3月11日のことから始めなければなりません。あの日の地震のあと、そしてその後に続く余震のなか、メンバーの多くは震災の当事者になり、正直なところ「イベントどころではない」という気持ちもありました。しかし、お互い無事な顔を見るのもかねて4月6日夜に集まり、さんざん話し合って、今年もやることにしました。あのときは、いつも通りにすることが、元気にしているよというメッセージになるような気がしたからです(ちなみに、その翌日の夜に、宮城県内は再び大きな余震に遭います)。計画していたことを見直し、最低限できることをまとめ、6月に街がどうなっているかを想像しながら、大急ぎで準備をしました。4月11日に今年の開催を発表、4月下旬に一箱古本市の募集をはじめ、イベントの全体がお知らせできたのは開催1ヶ月前の5月下旬でした。

そして、6月は本の月。

と、書きつつ、実は5月26日から始まっていました(そして、最終日は7月4日でした)。

 

 

東北ブックコンテナ

最初のイベントは、「東北ブックコンテナ」。本とモノと街の空気をつめこんだコンテナが、岩手・宮城・福島・秋田を巡るプロジェクトのひとつとして、5月26日から6月13日まで火星の庭を会場に開かれました。その担当からのレポートはこちら。

本屋、カフェ、ギャラリーを駅に見立てて、東北四県のゆかりの出版物、手仕事、雑貨、お菓子、伝統食など、各地の「いいもの」を詰めたコンテナが巡回するというコンセプト。その会場に行けば、四県の土地ならではのものに一堂に出会えるというものです。

5月の盛岡を皮切りに、仙台、会津をまわって7月の秋田まで、長い旅となりました。どの会場も各地でひらかれたブックイベントと連携。東北の夏祭りが巡回するように、本のお祭りとともにコンテナも移動していきました。

仙台の会場はbook cafe 火星の庭で行いました。会津コンテナのお菓子が一日で売切れるなど、好評いただきました。四県で約300アイテムが揃い見応えたっぷり。ご出身で今は他県にいる方、以前その土地に住んでいた方、旅行で訪れた方など、とてもうれしそうに見る方が多く、会話が飛び交い、連日大賑わいでした。

四県のものが同じ場所に並ぶことで、東北と言えどそれぞれ土地柄があること。と同時にそこはかと漂う共通点も感じられました。今回は準備の途中で震災が起き、準備の都合で山形、青森の参加まで至らなかったのですが、二県からも参加のオファーが届いております。さらに、関東、関西での開催の依頼もいただいています。ありがたいことですが、荷物を取りまとめ、管理するのが、実はかなり大変でして…。ふだんからおつき合いをしてきた各地のホスト役のチームプレイがあればこその成功でした。よりやりやすい方法を模索しながら、これからも継続していきたいと思います。

大正100年企画
あこがれの仙台モボ・モガ

さて、6月に入ってからは盛りだくさん。まずは、6月8日から30日まで、+R(プラスアール)開催中の Kuraxの3階にて、「大正100年企画 あこがれの仙台モボ・モガ」をやっていました。今年は大正元年から数えて100年目ということで、大正から昭和の仙台の写真をスライドショー。訪れた方々とのお話もはずみ、思わぬ証言も。

not major but...
GOOD PUBLISHERS

小さいけれど魅力ある本を出している出版社の本を特集したのは、「not major but... GOOD PUBLISHERS」。stock、火星の庭、magellan、そして、ジュンク堂仙台ロフト店の4店でおこないました。そのなかのひとつ、magellanではこんな感じ(店主のレポートより)。

赤々舎、 思潮社、 洛北出版の本をカウンターの一画に展示・販売しました。小さな什器も新調。この3社を選んだのは、全国をシェアに目覚ましい活躍を続けていること、そのうえで、仙台とゆかりある本も上梓しているからです。タイトルは以下の通り。

  • 赤々舎
  • 『カナリア門』(志賀理江子 2009)
  • 『ルワンダ ジェノサイドから生まれて』(ジョナサン・トーゴヴニク 2010)
  • 『ミルフィユ』第3号(せんだいメディアテーク 2011)
  • 思潮社
  • 『尾形亀之助詩集 現代詩文庫』(1975)
  • 『新国誠一 works1952-1977』(2008)
  • 洛北出版
  • 『汝の敵を愛せ』(アルフォンソ・リンギス 2004)
  • 『支配なき公共性』(梅木達郎 2005)

一目散に『カナリア門』をお買い上げ下さった、志賀さんファンの女性。『亀之助詩集』は、機を逸し続けていたところ、ようやく巡り合えたという男性の手に。『汝の敵を愛せ』には、フェアをやる前から予約を頂いていたのでした。また、ご購入までには至らずとも、これを機に多くの方に、上述の本や著者、そして出版社の存在を周知できたと思います。

この店の性格上、コーヒーを片手にパラパラ眺めるお客さまが少なくありませんでしたし、展示された本をきっかけに談話することもしばしばでした。

製本講座
本革表紙のロング・ステッチ製本

続いては、前回も好評だった製本講座。今回は革をつかった製本でした。20名の参加者のうち16名が女性。3時間にわたる作業もあっという間のようでした(4名の男性陣もおつかれさまでした)。参加者のアンケートにはこんなコメントが。

少し難しかったですが、できあがった時は嬉しかったです。思ったよりかっこいいのができて満足です。先生やスタッフの方も親切に分かりやすくおしえてくださったり声をかけてくださったりしたのでリラックスして楽しくできました。また来たいです。ありがとうございました。

Sendai Book Market 2011

BookBookSendaiのメインイベントと言えるのが「Sendai Book Market」。今年もサンモール一番町で、54組による一箱古本市やらカフェ、出張店舗などなどありました。こちらは写真をどうぞ。

出版者ワークショップ
出張版・仙台編

そろそろ6月も終わる26日には、Kurax3階での「大正100年企画 あこがれの仙台モボ・モガ」の場所へ、出版者ワークショップが出張してきました。これまでになかった出版の可能性を考えようと東京で2010年6月から始まったのがこのワークショップは、個人が本をつくって流通させるまでの過程を実践していく集まりで、月2回のペースで15人前後が参加しているそうです。今回の出張版では、ゲストに宮城県塩竈市出身でもある編集者の丹治史彦さんを迎えました。県外からの参加者もふくめ、20~50代までの21名の方が参加しました。では、ここでも担当者からのレポートを。

丹治さんが塩竈や仙台で過ごした子ども時代。子どものころから台所や料理のことが気になっていたそうです。高校生のときには光原社など器や暮らしの道具を置いているお店に出入りしていたという、その後の丹治さんの本づくりにもつながるお話も。好きな本を出している出版社を自転車で訪ねまわり、働かせてくださいと直談判したことから始まった編集者になるまでの経緯。本には印刷所などプロの手がたくさん関わっていることと本の可能性を教えてもらったというリブロポート時代。視点を変えた本をつくったり、書店以外の場所にも本を置いたりすることで、これまでみえてこなかった読者に出会ったメディアファクトリー時代。その後、アノニマ・スタジオを設立。ジャンルになっていない人を紹介する本をつくり、著者の日常的な動きを伝えるイベントをあわせて開催してきました。

自分自身で「こんな本をつくりたい」と思ったことがない、という丹治さん。自分は本にしたいと思っているけれどもどうすればいいのかわからない、という人の日常の営みをカタチにするお手伝いをしているという、現在の信陽堂編集室。会場内には丹治さんがこれまで手がけてきた本の数々。実際の本を手に取りながら企画から本になるまでの具体的な過程や大切にしてきたことをお話いただきました。

最後に、本に関わる仕事がしたいと思うようになったきっかけとなった本を紹介しながらおっしゃった丹治さんの言葉をーー紙に何かが刷られて綴じられていれば本であり、そんな本の何でもありなところを信じている。

toko! toko! Sendai vol.2

最後は、7月3日(6月の仙台は本の月、というキャッチコピーのイベントなのに、もう6月ではない!)におこなった「toko!toko!Sendai vol.2〜人も歩けば本に当たる〜」です。

toko!toko!Sendaiは、仙台市内各地(カフェ、雑貨店など)を舞台に、本にまつわるさまざまな指令を制限時間内で出来るだけ多くクリアしポイントを競うという、仙台のまちを再発見することを目的としたオリエンテーリング形式のまち歩きイベントです。今回の指令は7つ。本の中の登場人物になってみたり、絵本作家気分を味わったり、久しぶりに読書感想文を書いてみたり、本を羽子板代わりに羽根つきしたり…どれもヘンテコ!

指令場所となったのは、カフェやギャラリーなど団員がおすすめする仙台の素敵スポットばかり。ひとつの指令をクリアすると、参加者のみなさんは地図を片手に次の指令場所へ移動します。「初めていく知らなかった場所がほとんど」「行けなかった指令場所(お店)にも行ってみたい」「素敵なお店を知ったのでまた行ってみます」という参加者も多く、新たな仙台の魅力を感じてもらうことができたようです。

優勝チームの行方やそれぞれの指令の様子は、企画をしたつれづれ団のブログで詳しく紹介していますので、こちらもぜひご覧ください。

http://tsurezuredan.cocolog-nifty.com/blog/

「読むだけではない本の楽しみ方があることがわかった」と参加者のみなさん。

 

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というわけで、なんとか開催できました、というには今年もいろいろやりすぎた感すらある2011年のBook!Book!Sendaiでした。みなさまどうもありがとうございました。